QDT 2018年7月号
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39ブラキサー患者に対する補綴・咬合治療について39 ブラキシズムの強い患者に対する補綴治療では、その強い力によって装着した補綴装置を破壊することがあるばかりでなく、患者自身の歯や歯根が破折したり、ブラキシズムをもつ患者に多く認められる骨隆起やアブフラクションなどの兆候が増悪したりすることがある。さらに顎関節症状の深刻化なども懸念されるため、より注意深く治療を進めるべきである。治療後に長く 歯科医療者は、どのような手段で患者が「ブラキサー」であると判断しているのであろうか? ベッド ブラキシズムは、程度の差こそあれ多くの人がもっている生活習慣のひとつであり、決して疾病というわけではない。一般論として、ブラキシズムはホームページなどでは「ブラキシズムは多くの人がしているが悪習癖ではなく、脳の中枢と深く関係しておりストレスによってその程度が増減する」ということや、「それ自体を止めるのは難しいのでナイトガードなどで歯や補綴装置を守りましょう」というような体で説明されている。Lavign1はこのような規則性をもった咀嚼筋の活動(Rhythmic Masticatory Muscle Activity:RMMA)は、睡眠時の微小覚醒(Micro Arousal)と関係しており、その間に起こる交感神経系の挙動や大脳皮質脳波活動(アルファ波)、心拍数の変化に一定のパターンを見出している。睡眠時ブラキシズムは病的な運動ではなく生理的な活動なのである。こうしたブラキシズムに関する考え方の基本についてはすでに著使える補綴装置を装着するためには予知性をもった診査・診断を行う必要があり、従来どおりの診断・治療や審美的な回復のみを考えた手法では不十分である。本編では私たちが咬合再構成をするための診断から最終補綴物装着、そして術後経過観察期間の注意点などについて順を追って解説したい。パートナーから歯ぎしり音を指摘される、歯の咬耗、修復補綴物の摩耗が大きい、歯や歯根の破折の既往がされている書籍「ブラキシズムの臨床」2や、2003年に「the Quintessence」誌上で連載した際にブラキシズムについて記載したもの3、4などを参照されたい。 現時点では、ブラキシズムへの対処法は歯ぎしりそのものを減らすアプローチと、咬合の問題を改善するという両方向からなされるべきといわれる。歯ぎしりなどを減らすためには認知行動療法や薬物療法のようなアプローチがあり、ほかにも姿勢を直すことや生活習慣、睡眠の質を改善するというような取り組みがある5。しかしながら、いまだにブラキシズムが強い患者の補綴物や歯そのものが過度に摩耗したり破折したり、時には完全に割れてしまうなどの悩ましい問題は解決していない。われわれ歯科医療サイドが長く機能できる歯や補綴物を提供するためには、診査・診断に基づいた咬合のデザインを考慮することがもっとも重要なことであると考えている。はじめにブラキサーという「疾患」があるのか?1ブラキシズムの検査法と診断2QDT Vol.43/2018 July page 1043

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