QDT 2018年7月号
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+α 別冊の読者から寄せられる質問の中で、「インゴットは何を使えば良いのか?」というものも多い。これに関しては、筆者自身も歯科医院から送られてきた画像と格闘しつつ、その都度最適と思われるインゴットを選択しているというのが実情である。 今回は改めてインゴット選択に関する筆者の考えをまとめてみたい。まずはその大前提となるプレスセラミックスの3つの製作方法を表1に示す。 必ず金属が介在し、入射光が金属によって吸収されてしまうメタルセラミックスにおいては、オペークによって入射光を反射させて明度を確保する必要がある。また、メタルセラミックスにおけるオペークは単純に入射光を反射させるだけではなく、加色されたオペークを部分的に使用して反射量をコントロールして全体の明度をコントロールする場合もある。 プレスセラミックスのレイヤリング法においては、フレームとなるプレス体の光透過度が天然歯牙と近似しているため、天然歯牙に見られるような内部構造を考慮してインゴットを選択する必要がある。ここで、図1、2を見ていただきたい。抜去歯牙ではあるが天然歯を部分的に形成し、形成前後の色調を比較してみると、前歯・臼歯ともに表層に比べて形成した部分の明度が高くなっていることが確認できる。レイヤリング法の場合は、表面に築盛する陶材で色調を再現していくわけであるが、コアとなるフレームは天然歯牙のように高い明度を確保しておく必要がある。そのため目標とするシェードよりも明度の高いもの(例:A3シェードを目標シェードとするならば、インゴットはA2もしくはA1を選択する)を選択すべきと考える(図3、4)。 また、支台歯形成によって削除された歯質も考慮すべきである。削除されているのは前歯・臼歯どちらもエナメル質が大半であることが図5、6からも理解できる。製作法利点欠点STAIN techniqueモノリシックのため、素材のもつ強度を最大限に活かすことができる複雑な色調表現が困難なため、前歯の単独歯補綴の色調表現が難しいCUT-BACK technique素材のもつ強度を活かしながら、複雑な色調表現にもある程度対応できる歯頚部における色調がインゴットに委ねられるため、複雑な色調表現が難しいLAYERING technique色調表現においてもっとも有利である強度的に他の製作法よりも不利である。厚みが取れないため、遮蔽力という点において他の製作法より不利である表1 プレスセラミックスの3つの製作方法。1st Topicsインゴットの選択基準77QDT Vol.43/2018 July page 1081

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