QDT 2018年7月号
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国内初「デジタル歯科診療科」を開設して─その使命と展望─101はじめに開設までの経緯とその狙い 歯科治療の流れは、長らく続いてきたアナログ手技を用いているロストワックス法からデジタル機器による診療と技工に取って代わろうとしている。私たちは、その変革の狭間に居り、どのように対応し、どのように変化していくかを見守っている状況である。 時代における技術革新は、日本における携帯電話を例にとると、それまでの自動車電話から持ち運びが容易になった(とはいえ、肩掛けであった無線機は本体だけで3kgと重量があり本来の意味での携帯には程遠い製品であった)1985年のアナログ方式ショルダーホンが販売され、その2年後にはかなりの技術進歩によりハンディータイプ(120×42×180mmで900gと現在から比べるとかなりの大きさではあった)が販売された。1993年にはデジタル式の携帯電話が導入され、2000年にはアナログ方式が終了となった。その後、通信方式や小型化、さらには2008年のiPhone販売から始まった小型PCを不要とするスマートフォンの普及と、携帯電話の世界では急速に技術革新がなされて現在となっており、その普及スピードもテレビ・ラジオを凌駕し、ごく短い時間で携帯電話が、さらにスマートフォンはより短い時間で普及が進んできた(図1)。このような技術の急速な進歩とその普及速度は医療現場でも起こっ 「デジタルの翼、個を放つ」。2018年元旦の日本経済新聞の1面であるが、全世界のスマートフォンのデータ通信量が指数関数的に増加し、海外ではビットコインで納税も受け付けられると紹介されている。 今、多くの産業では、ICT(情報通信技術)化が急速に進み、さまざまな業務が効率化されるとともに、サービスの利便性も高まっている。歯科医療においても昨今のデジタルデンティストリーの進歩は目覚ましく、そのアドバンテージは、術者・患者双方によく知られるところとなっている。 このような状況の中、本学は昨秋に新病院を開院し、その中に国内では初の標榜科となる「デジタル歯科診療科」を開設した。今回は、このデジタル歯科診療科の概要についてご紹介する。ており、歯科医療も対応を迫られており、私たち歯科医療人も変わるべき節目に立っている。 歯科治療のデジタル化の歴史を見てみると、意外と古い。1971年にDuretは、CAD/CAMシステムの考えを歯科に持ち込み、1983年には最初のプロトタイプを発表している。技術立国日本においても、1980年代から各大学で研究開発が盛んに行われたが2、当時グローバル化と技術革命が、私たちの労働と仕事内容を急激に変えている 仕事の文脈が変化し、人間開発に対する意味合いも変わっている。仕事の変容を引き起こしているのはグローバル化と技術革命、特にデジタル革命である。グローバル化は世界規模の相互依存を生み出し、貿易、投資、経済成長、雇用の創出と喪失に多大な影響を及ぼしている──そして、創造的活動とボランティア活動のネットワークに対しても影響を及ぼしている。私たちは、技術革命が加速する中で生活していると考えられる。 2005年の13兆ドルから14年のほぼ24兆ドルへといった具合に、過去10年間に世界全体でモノとサービスの貿易はほぼ倍増した。また、デジタル部品の貿易も増えている。33 デジタル技術は驚くべきスピードで導入と普及が進んでいる。米国では、人口の半数が電話を持つでは102015年は70億30億人 デジ齢、都2015年ンター上国でにとどま グロ外部委加価値的なネ一部や下請ける。た製造、事して万300 今やもまたされて市場へべてを生産工企業にサービ 近年もつよ製品のいる。2ビス・金倍のペサービ デジ(共有型私たちは加速する技術革命の中で生活していると考えられる図 4米国における新技術導入の速さ注:ここでの「導入」は、人口の半数に普及するまでの時間を意味する。出典:Donay 2014.020406080自動車飛行機電話電力ビデオレコーダーラジオテレビパソコンインターネット携帯電話技術の導入に要した時間(単位:年)図1 米国における新技術の普及スピード。人口の50%に浸透するまでの年数を示す(参考文献1より引用)。QDT Vol.43/2018 July page 1105

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