QDT 2018年10月号
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22Feature article #122 補綴治療の前処置として、歯周組織の環境整備は補綴歯科治療自体の長期的な安定にも寄与する重要な治療のひとつである。しかし、その一方で、歯周組織への外科処置をともなう前処置が行われた場合には、歯周組織の治癒、とくに骨縁上組織の再構築(形態・付着)にともなう反応から、ときには歯周組織のマネージメントに非外科処置とは異なったアプローチが求められる。それゆえに、「歯周外科後の補綴歯科治療は難しい」というイメージが一般的となっているが、それはどのような理由からで、どのような対応が臨床において求められるのであろうか。本稿では、これらに関して文献と症例を通じて考察したい。 審美領域における歯周外科処置の多くは、歯冠長延長術(Surgical Crown Lengthening、以下、SCL)ではないだろうか。診査・診断はもちろんのこと、治療計画の段階から手術後の補綴歯科治療を想定した上での術式の選択が重要となる。歯肉のバイオタイプは? 修復する補綴装置の歯冠形態は? 支台歯形成のフィニッシュラインの位置はどこに設定するのか? そして、修復後に歯間乳頭の再建は可能か? など、さまざまな観点を考慮した治療計画が必要となる。 本稿では、各種要因の影響を除外する意味から、すでに喪失した組織を含む病的組織に対する骨外科処置と、非歯周病罹患歯で健全支持骨を切除して健全歯質を歯肉縁上に獲得するSCLとを区別する。そのうえで、後者の処置後に遭遇するさまざまな問題点に限局して考えてゆく。Feature article #1歯冠長延長術後の補綴歯科治療の困難さとその対応木林博之 Hiroyuki Kibayashi歯科医師・きばやし歯科医院京都府長岡京市開田1-21-21大阪大学大学院歯学研究科臨床教授はじめにQDT Vol.43/2018 October page 1564

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