QDT 2018年10月号
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23歯冠長延長術後の補綴歯科治療の困難さとその対応23 SCLの概念については、最初にCohen DW(1962)が紹介し、現在では組織の退縮や切除と歯槽骨外科手術に矯正治療を組み合わせて、歯を露出させる手法とされている1。 SCLの主な目的は、①補綴的条件の改善(フェルー SCLの術式は、歯肉縁をどの程度根尖側に移動させるのかを決定し、その量に対して歯肉と歯槽骨をどのように扱うかによって決定される。1)角化歯肉の幅 歯肉の取り扱いは、角化歯肉の幅を基準に考える。天然歯の周囲には少なくとも2mm以上の角化歯肉が必要とされている3、4。したがって、SCL後に2mm以上の角化歯肉を残すことができる場合は、歯肉切除のみで対応できる(表1中の条件1および図1中の条件1-1)。しかし、2mm以上の角化歯肉を残すことがルの獲得、歯冠長の獲得)、②審美的条件の改善(歯冠長幅比、歯肉縁の位置、歯肉露出量の改善)、そして③生物学的条件の改善(生物学的幅径〔Biologic Width〕の獲得)、が考えられる。できない場合は、部分層弁剥離によるアピカリーポジションドフラップ手術を行い、角化歯肉幅の減少を防止する(表1中の条件3、4および図1中の条件3、4)。ただし、歯肉縁下に補綴装置のマージンを設定して補綴歯科治療を行う歯に対しては、補綴歯科治療後の炎症の範囲・付着の喪失・退縮などを考慮すると十分な幅の角化歯肉が必要であり5、6、具体的に5mm以上の角化歯肉が必要であることが示唆7されている。角化歯肉が2mmであっても歯肉溝が2mmであれば、結果として付着歯肉は0mmということもありうる。いずれにしても術前に辺縁歯周組織の注意深い精査が必要となる。1.SCLの概念とその目的2.SCLの術式選択2SCLの術式を決定する際に考慮すべき臨床的要素表1 歯冠長延長術の術式を決定する際に考慮すべき臨床的要素(参考文献10より引用・改変)2。術後に残存する角化歯肉幅術後に残存する生物学的幅径術式条件1≧2mm≧3mm歯肉切除条件2<3mm歯肉切除+歯槽骨切除条件3<2mm≧3mmアピカリーポジションドフラップ条件4<3mmアピカリーポジションドフラップ+歯槽骨切除QDT Vol.43/2018 October page 1565

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