QDT 2018年11月号
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AR glassを用いた新しい歯科治療―見えないところを見るAR技術の可能性を求めて―75 歯科界において、医科臨床に比べデジタル技術の臨床応用については遅れが見られる。すでに医科では人工関節手術にナビゲーションシステムを臨床応用するなど、「経験の浅い医師でもベテラン医師並みかそれ以上の正確さで作業ができる」ようになり、一般新聞紙上に掲載(日本経済新聞4月4日、神戸海星病院・柴沼副院長)されているが、歯科界においては、開発は行われているものの一般臨床で利用可能な機材の発表は限定的である。 しかし、これからの歯科界の発展にとって、デジタル技術を臨床に応用していくことは避けて通れない変化でもある。われわれは2015年より、確実性の高い視野の確保と第三者との情報共有を可能にする機材の開発、またAR技術の臨床応用に関する研究開発を行い、2018年4月日本デジタル歯科学会において報告を行うことができた。今回これらの報告に加え、臨床におけるデジタル歯科技術のさらなる可能性についてお伝えしたいと思う。 多くの歯科医師は、臨床において「よりよく見たい」という気持ちをもっていると思う。筆者も、もっと術野を鮮明に見たい、歯肉の下の骨の状態をCT像から想像するのではなく直接見ながら処置を行いたい、さらには見ているものを他の歯科医師にも同時に見てもらい意見の交換を行いたいという願望をもっている。これらを実現するためにこれまで技術開発を行い、現在は拡大視野を実現する“Zoom Up Scouter”を完成させ、また、透過視野を実現する“CT Scouter”を開発中である。いずれのScouterも市販のデジタル機材を組み合わせた構成とオリジナルのプログラムによる統制で、機材の進歩に合わせたバージョンアップを可能としている。 Zoom Up Scouterに関しては、複数のモニターの先生に装置を使用していただき細かな改良を加え最終段階に入っており、すでに特許を取得(特許番号:2017-119763)、現在は市販化に向けて薬事承認申請中である。カメラおよびScouterの性能向上によりもっとクリアな画像も可能となると考えている。また、CT Scouterに関しても、CT tracking systemについての特許を取得(特許番号:2016-151378)、今後は精度に関する検証を行い、臨床で使いやすい方向に機器開発を進めるべく取り組んでいる。 本稿の内容には、動画でご覧いただきたい情報が多数含まれるため、QRコードで動画サイトへのリンクをしている。こちらは【対応OS】WindowsOS/macOS/Android OS/iOS/Mozillaでの動作を確認している。 スマートフォンを用いて、図に記載されているQRコードからARの技術、スカウターの視野を体感してほしい(図1)。図1 本稿にかかわる動画。QRコードからARの技術、スカウターの視野を体感してほしい。QDT Vol.43/2018 November page 1795はじめに

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