QDT 2018年11月号
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92連載 部分床義歯を究める松本勝利 Katsutoshi Matsumoto歯科医師・医療法人社団慈愛恵真会 あらかい歯科医院福島県南会津郡南会津町関本下休場729‐1部分床義歯を究める連載第11回 咬合的要素の決定順序と咬合高径の設定:その3 ゴシックアーチとは、ポッセルト図形のある咬合高径の横断面を見ているものである(図1)。そしてこれを真上から見ると、普段から親しみのある矢印状の形態となる(図2)。また、これを真横から観察すると、終末部は嚥下位となるため下顎位は後下方に運動する(図3、タッピングポジションから嚥下時に顎が後下方に引かれることであるので、真上から観察すると0.5~1.0mm程度後方にラインが描記されることになる)。そのため、後下方に運動する直前の位置が真上から見たタッピングのポジションと一致する場合が多い。 また、ゴシックアーチトレーシングを行う際に具備する重要な事項として、①最終的な咬合高径で描記すること、②最終的に付与する下顎運動に対する咬合平面上に描記板が設置されていること、③下顎の正中線上に描記針を位置づけること、そして④描記針は描記板に鉛直になるように位置付けられていること、の4点が挙げられる。 まず①については、無歯顎の場合は自由に設定できるが、残存歯のある症例ではゴシックアーチ描記時の顎運動時に残存歯の干渉が生じ制約を受けてしまう。下顎頭が5°プラス回転(開口する方向)するまでは回転運動で開口していることが観察されており、これは切歯部でいうとおおよそ6mmの開口量に値する。そしてこの開口量を挙上するのであればゴシックアーチ描記装置製作時に咬合器上で咬合高径を上げたとしても生体上と同じように回転するために、ゴシックアーチ描記後に咬合器上で咬合高径を下げたとしても同様に生体と同じ動きをし、咬合位は復位されると考えられる。 1ゴシックアーチトレーシングを行う際に重要な事項92QDT Vol.43/2018 November page 1812

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