QDT 2018年11月号
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93第11回 咬合的要素の決定順序と咬合高径の設定:その3 一方、総義歯(上下無歯顎)の場合においては、術者の診察→検査→診断に基づく咬合高径にてゴシックアーチトレーシングを行う。 また②については、下顎運動の検査をしているために、下顎運動用の平面に描記板を位置づけることが必要である(下顎運動用の平面については、今回後述する)。なぜならば、ゴシックアーチは、下顎骨に付着している4つの靭帯により規制された、下顎骨に付着する筋肉による下顎運動の限界運動を基にして描記されているためである(図4)。 また③については、描記針を下顎に設置し、かつ次に述べるように下顎の正中線上に設置することで下顎のふらつきを最小限に抑えながら安定したゴシックアーチトレーシングを行うことができるようにするためである。これに対し、描記針を上顎に設置すると、下顎に設置した場合よりも側方クリステンセン現象が強く生じてしまい、下顎がフラフラして安定しづらい状態となり、下顎位を定めるには不向きであると考えている。ただし、全部床義歯をフルバランスドオクルージョンで排列する場合の咬合器の設定では、側方ゴシックアーチは、ポッセルトの図形の断面の一部図1 ゴシックアーチとは、ポッセルトの図形の“ある咬合高径における”一部分の横断面を見ているものである(本図は参考文献1の137ページより引用)。図2 普段から親しみのある、ゴシックアーチの矢印状の形態はポッセルトの図形を真上から見たものである。図3 真横から観察すると、終末部は嚥下位となるため下顎位は真横から観察すると後下方へ移動する。断面真上から真横からタッピングポイント嚥下時最大開口位側方限界開閉口運動路後方限界開閉口運動路最大蝶番開口位最側方咬合位蝶番開閉口運動路咬頭嵌合位切端咬合位最前方咬合位下顎安静位前方限界開閉口運動路習慣性開閉口運動路最後方咬合位93QDT Vol.43/2018 November page 1813右側方運動前方運動左側方運動アペックス(左の顆頭)(右の顆頭)

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