QDT 2018年12月号
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90連載 部分床義歯を究める松本勝利 Katsutoshi Matsumoto歯科医師・医療法人社団慈愛恵真会 あらかい歯科医院福島県南会津郡南会津町関本下休場729‐1部分床義歯を究める連載第12回 咬合的要素の決定順序と咬合高径の設定:その4 佐藤貞雄氏らの書籍1を基にした模式図を(図1)に示す。ここでは、咬合平面に対してSpina Mentalis(以下、Ment)から垂線を引き、そこを境目として、どのエリアにアンテリアガイダンスを担わせることが可能かを決定づけている。なぜならば、このMentの位置には顎二腹筋が存在し、下顎を左右側方運動させる際に筋力が直接下顎骨にかかる最前方位であり(図2)、この位置より後方の下顎骨にはこの筋肉により力が強くかかるため、Ment以後の臼歯部において下顎運動の側方運動時にガイダンスを与えてしまうと過大な力が歯根および歯根周囲骨にかかってしまい破壊力として働いてしまう可能性があるためである。 上記の法則に従うと、骨格型Ⅱ級の場合においては咬合平面がより急峻になっているために、より後方の臼歯までガイドに参加させることとなり、逆に骨格型Ⅲ級の場合にはより前方の歯でガイドさせることとなり、犬歯のみで咬合誘導することになる場合もある。 このことから、前号で述べたように形態的にアンテリアカップリングを担っている歯が第一小臼歯であろうとも「側方ガイドは第一小臼歯まで」とは一概に言い切れないことがわかる。 臨床的に、どの範囲をカップリングさせて機能させるかについてより正確性を期するためには、セファロ分析のような画像診断(セファログラムは厳密にいえば歪んだ像になっているとはいえ)を基に行うことが望ましいと考えている(図3)。しかし、すべての歯科医院にセファログラムを撮影できる機材が準備されていないのも現実である。このような時には、実際に患者の 1骨格と咬合力、そして全身を意識した咬合付与の重要性90QDT Vol.43/2018 December page 1968

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