QDT 2019年1月号
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はじめに スプリント治療は機能的な治療過程の初期段階として通常行われ、咀嚼筋の緊張を低下させ、咬合状態の調整を可逆的に行うことができる8。基本的に、オクルーザルスプリントはさまざまな点で他のスプリント装置とは区別される11。オクルーザルスプリントは主に静的および動的咬合において新たに設定された咬合位を臨床的に試験するために使用される8。この機能評価の前にワックスアップによる審美的評価が行われる13。一般的には、さまざまなオクルーザルスプリントは即時重合型ポリメチルメタクリレート(PMMA、粉液混合タイプ)をベースに使用し、ブロックアウトした石膏モデル上で調整し、加圧窯で重合する16。このタイプのスプリントは広く使用され、数ヵ月にわたる臨床使用が実証されている。一方では、現代の他の選択肢と比較して多くの技工上および臨床上の欠点が存在する。歯科技工所では必然的に製造プロセスに組み込まれているが、重合収縮はスプリントの適合に悪影響を及ぼし、作業模型のほとんどが破損するため再製作も難しい。しばしば不快な形状や透明色が患者から嫌がられ、職場や社交的な場所での使用を難しくしたり、不可能にしたりする8,10。さらに、従来の製造技術において研磨粉じんおよびモノマー蒸気は歯科技工士にとって有害であると考えられ、残留している未重合成分(残留モノマー含有量)は患者にとって健康上の副作用を引き起こす可能性がある6,9。従来のオクルーザルスプリントのこれらの特性は、治療上の成功のための2つの重要な基盤、すなわち患者のコンプライアンスと治療の効率に好ましくない影響を与える2。 CAD/CAMテクノロジーの領域にも、従来の製造法で既に知られている材料が半既製品としてどんどん提供されてきており、その標準化された製造工程によって品質の向上と再現性、適用範囲の拡大をもたらしている。工業生産による高性能ポリマーのスプリントは、従来の製造法によるものよりも優れた材料特性を示す。CAD/CAM製造において歯冠色ポリカーボネートの適用範囲は広く、さまざまな形状のスプリントのために複数の興味深い材料が提供されてきているようである3,5,18。ポリメチルメタクリレート(PMMA)に比べて柔軟性が高いため、ポリカーボネート製のスプリントは破損しにくく、非常に薄くすることができる。これは患者にとってとても有意義である。薄くできるので、後から入る本修復の形態により近い形状にすることができる。ワックスアップの咬合面形態をもたせ、再定義された嵌合位で設計された静的および動的咬合を再現できるので、上下顎同時にスプリントを使用して、咬合高径を大幅に変更するという選択肢が加わる。筆者のグループの臨床経験では、この歯冠色スプリントは非常に高い患者のコンプライアンスが得られる。可撤式の暫間修復装置として審美的外観および歯に近い形態をもつスプリントは受け入れられやすく、仕事中もプライベートでも継続的に着用され得る。摂食時だけは、保持力が弱いために、使用することができない(「23時間スプリント」)。 本稿では、臨床症例を通して、過度に咬合高径を喪失した患者における歯冠色ポリカーボネート製オクルーザルスプリントの有用性を、ステップを追って紹介する。

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