QDT 2019年2月号
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21デジタルの変遷・限界・適応を理解したIOSと3Dプリンティング模型の使いこなし(後編)21 口腔内光学印象(以下、IOS)に求められるスキャン精度とは、現状で臨床的に許容されているアナログ印象と石膏模型そして咬合採得から製作される補綴物と同等またはより近似した適合が再現できることである。従来法の場合、補綴物の適合精度を左右する因子として印象材や模型材の寸法変化が挙げられる。一方、 デジタル法では、口腔内を直接スキャンすることで作業工程の簡略化が図られ、最終的な補綴装置の適合性に関わる材料の寸法変化や材料間の誤差の影響を少な IOSを利用した補綴物の精度を左右する因子1として、①スキャナーの精度②正確な撮影に影響を及ぼす因子(撮影原理、撮影時間、パウダリング、スキャン操作、咬合採得)③光造形模型と咬合器付着の精度④技工用CAD/CAMの精度⑤補綴設計(支台歯およびPonticの形態、数、配置)などが挙げられる。本稿では①~④について述べる。①スキャナーの精度 ─IOS技術の正確さ(小濱) 多くの論文が、in vitroおよびin vivoの両方で、現在のIOSの適応症を探るための精度(正確度と精密度)を報告している2-6。正確度(Trueness)は、測定された数量が、その真値にどれほど近いかを示すもので、精密度(Precision)とは、複数行った測定のそれぞれの結果がお互いにどれほど近似しているかを示すものである。しかしながら、測定方法が使用される試くすることができると考えられる。近年では、スキャン速度や精度などの向上や動画形式による連続的なスキャニングも可能となり、臨床応用も徐々に普及してきている。しかし、光学印象法を応用した補綴物製作の適応症や適合性に関する臨床報告はまだ少ない。 そこで、本稿(後半)では、IOSを利用した補綴物の精度を左右する因子に対する分析から精度検証に基づいた現時点での適応症例の選択と実際について解説したい。料の質、オペレータの測定技術、使用機器、測定間の経過時間、環境(温度、湿度など)などの影響を受けるため、精度にばらつきが生じるとの報告もある。たとえば、in vitroでは、シリコーン印象から製作された間接的な石膏モデルのスキャンを対照としたデータと、これらの結果をin vivo(口腔内スキャンからのデータ)と比較することは難しいと報告されている7、8。 とはいえ、多くの論文の結論は、現行のIOSは少数歯の補綴物製作では、従来法と同等の臨床的に許容できる精度を示している9-11。Ahrbergら12は、モノリシックジルコニア単冠と3ユニットブリッジのマージン部と軸面の適合性は、臨床上許容できる範囲にあり、従来の精密印象法に代わる十分な精度を示したと述べている。また、支台歯を工業用スキャナー(ATOS)で基準スキャンし、7種の口腔内スキャナー(IOS)と従来法の印象(IMPR)との、フィニッシュラインの鮮明度(FLD)およびフィニッシュライン精度(FLA)のレベルが分析されている13(図1)。高いFLD▲はじめに▲1.光学印象の精度QDT Vol.44/2019 February page 0183

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