QDT 2019年4月号
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22Feature article ♯1 セラミッククラウンの誕生以来、陶材の築盛・焼成方法は大きくは変わっていない。すなわち、陶材を水で練和して象牙色陶材、エナメル色陶材を築盛・焼成して完成させる方法である。さらに現在では、象牙質構造の築盛後に一次焼成を行い、エナメル質の築盛として二次・三次焼成を行って完成させる多層焼成法などがある。これらに加え、インターナル/エクスターナルステインで色調や明度を調整し完成させる方法も広く用いられているが、あくまでも従来の技法から細分化されたものにすぎない。また、色調再現のための理論は筆者が考案する余地もないほど完成されているが、一方では築盛・焼成方法などが困難で、リスクの高いテクニックも多い。以下に、従来の陶材築盛法における問題点について示してみる。1)水による多層築盛法の困難さ 周知のとおり、これまでの築盛法は水練りした陶材泥を湿潤状態で多層にわたって築盛するものであり、その不安定さから取り扱いが困難であった。ここにおいては術者(歯科技工士)の経験・技術による部分が非常に大きく、その優劣が個人のテクニックの差と直結してきた。セラミストを志す歯科技工士にとって、この問題が大きな壁となっており、繰り返しになるが技術の伝承にも困難を生じさせている。2)内部構造からの陶材築盛の困難さ 内部構造から外形に向かって築盛を進める技法は自由度が高く、芸術的な「作品」を製作することができるが、こちらも不確定な、他者に伝達できない要素が多く、技術の伝承にとって困難を生じさせている。それでも単冠であればフリーハンドでも製作できるかもしれないが、多数歯を製作する場合には最終形態からの、象牙質構造の寸法精度を考慮したカットバックが必須テクニックだと思われる。また、これまでに発表された文献をみても多数歯の象牙質構造の築盛などに関する詳細な発表は皆無に思われ、技法も曖昧である。 セラミッククラウン完成までのステップは複雑であり、コーピング製作~象牙色陶材築盛~色調整~エナメル色陶材築盛~形態修正~グレーズ~完成と多数の工程がある。この工程の中で、歯科雑誌ではステイン法など、色調に関する事柄が多く取り扱われてきたが、それ以前の象牙質の構造を適切に築盛できなければステイン法の効果は十分に得られない。「良い素材」に「味付け」をするのがステインであり、その「良い素材」とは濁りのない陶材で正確な歯冠形態で内蔵された象牙質構造である。それを最後まで保つことができるか否かが、セラミッククラウン製作において第一に必要な技法と思われる。 同時に、明度・濃度(彩度)をコントロールするパウダー選択の理論を習得することも重要である。たとえば、加色するためにインターナルもしくはエクスターナルステインを行う場合は、象牙質構造の濃度(彩度)ランクを下げて明度を上げる。エナメル色陶材の築盛でも、明度コントロールをした陶材の色選択をしなければ最終的な色調の一致はない。 ともあれ、最大の目標は、正確な形態と明度・濃度をもつ象牙質構造を完成させることである。インターナル/エクスターナルステインはその後の色調調整に用いるもので、いわば「後半のテクニック」である。そうではなく、まずは前半の象牙質構造の築盛を習得することがセラミストへの近道だと考える。1.従来の陶材築盛法における問題点QDT Vol.44/2019 April page 0516

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