QDT 2019年4月号
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61歯肉との調和を目指した前歯部セラミッククラウンの製作S shape proleに取り組む理由図1 emergence proleのイメージ図。補綴治療において、現在では一般的に歯肉縁下のsub-gingival contourと歯肉縁上のsupra-gingival contourの双方を総称した用語として用いられることが多い。図2 抜去歯のイメージ。抜去歯を観察すると、sub-gingival contourの部分がアンダーカントゥアになっているものがある。側方からこの部分を観察するとS字に見える(本図は参考文献2、3を引用して作図)。supra-gingivalcontoursub-gingivalcontouremergenceprofile 前歯部の審美不良を主訴とする患者から求められる要望には、色調や歯冠形態の改善、現補綴物でのマージン露出やブラックトライアングルの改善などが挙げられる。特にマージン露出、ブラックトライアングルの出現に関しては歯肉と補綴物が接する部分で起こりえる現象であり、歯科技工士としてかかわりのある項目であるが、マージンの設定位置などによっては補綴物では対応できない場合もある。しかし、歯肉縁下にマージンが適度に設定された場合、歯科技工士はemergence profileを考慮した補綴物の製作が可能になり、歯肉の形態やその後の予後にも多少なりともかかわっていくことになる。emergence prole emergence profileとは、1977年に桑田正博氏およびStein氏により提唱された考え方で、「軟組織から硬組織への飛び出し口付近の歯および補綴装置の形」を指す。「歯が軟組織から飛び出す前の付着上皮、歯肉溝辺りから、飛び出した先の歯肉溝を過ぎたサービカルピーク付近までを含む歯と軟組織の連なる部分」のことで、「歯の周囲360°のエリア全周にわたって異なった形状・角度で存在する」と定義されている1。 補綴治療において、現在では一般的に歯肉縁下のsub-gingival contourと歯肉縁上のsupra-gingival contourの双方を総称した用語として用いられることが多い(図1)。S shape prole S shape profileという概念は矢状断でのsupra-gingival contourとsub-gingival contourの歯軸に対する角度を、歯肉頂縁を境に異なる角度に設定し、それぞれの目的を確実に行うという発想により成り立っている。どちらも歯周組織に自然な形で受けいれられなければならないことを前提として、sub-gingival contourではマージンの適合と組織との調和を優先、supra-gingival contourでは審美と清掃性を優先させるという目的がある。しかしその形態を得るための術式は術者により異なる。QDT Vol.44/2019 April page 0555

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