QDT 2019年5月号
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21審美性・機能性を目指す その前に:今こそ再考したいクラウンのセメンティング セメントの流動性からみた装着法の一提案 接着性レジンセメントの接着強さは従来の合着セメントと比較して有意に高く、補綴装置のセメンティングに優れたセメントである2。接着性レジンセメントの使用により歯冠補綴装置の再製率が従来型セメントの場合よりも大幅に低下したとの報告もあり3、その有用性が示されている。それゆえに、補綴歯科治療への接着性レジンセメントの応用は補綴装置の脱落や二次う蝕の発症を防止するうえで不可欠であることから、その使用頻度は年々増加している。 接着性レジンセメントの普及により、維持力を従来のfriction fitとよばれる軸面の摩擦力に頼る必要がなくなり、メタル修復からメタルフリー修復へと変遷していくことになる。とくに、金属アレルギー患者の増加や白い歯へのニーズ、そして高騰する金属材料費を背景に、ハイブリッドレジンブロックによるCAD/CAM冠が国民健康保険に適応されたことから急速にメタルフリー修復へと大きくシフトチェンジしつつある。 無論、補綴技術としては歴史の浅いCAD/CAM冠が患者にとって有用な技術として定着するには、術式を科学的に検証し、予後に影響を及ぼすリスク因子を明らかにする必要があることはいうに及ばない。 しかしながら、さまざまなCAD/CAM冠の予後調査では、装着後6ヵ月間の脱離が9.0%であった4。装着後1年8ヵ月間の脱離が24.5%、そのうち装着後1ヵ月以内の脱離が43.8%、その約半数は1週間以内の脱離であった5。22ヵ月後の予後調査における脱離が5.0%で、そのうち3ヵ月以内の脱離が3.3%であった6。10.6ヵ月後の予後調査における脱離が4.7%であった7、と報告がある。最新の予後調査でも、2年間の経過において脱離・破折は4.2%であり、脱離発生の平均期間は3.9ヵ月であった。また、対照群の全部鋳造冠であっても脱離が認められたと報告がある8。さらには、17ヵ月後の予後調査における脱離が4.9%で、そのすべてが6ヵ月以内の脱離であった。新たな症例による追加調査では13ヵ月後の予後調査に 近年の補綴歯科治療におけるデジタル技術の発展は著しく、デジタル技術によるイノベーション、いわゆるデジタルデンティストリーは補綴歯科技術の進展だけでなく、補綴歯科臨床のワークフローを根本的から変えつつある1。CT、CAD/CAMをはじめ、オーラルスキャナー、3Dプリンタなどさまざまなデジタル技術が日常の補綴歯科臨床に取り入れられている。 しかし、このデジタルワークフローに決して加わることができない補綴歯科治療がある。それが、プレパレーションとセメンティングである。今後、どんなに進化したデジタル技術をもってしても、このアナログ技術(手作業)に取って代わるものはないであろう。 今回は、CAD/CAM冠のセメンティングにおける問題提起からその解決法の一案について、臨床検証と基礎実験に基づいて解説してみたい。❖はじめに❖1-1.CAD/CAM冠が早期に脱離する!?Part 1:問題提起編(中村)QDT Vol.44/2019 May page 0677

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