QDT 2019年5月号
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127“No more wax up”は本当に可能か? ─デジタル化を見据えた今後の歯科技工所の在り方─(前編)1 内閣府の発表によれば、わが国の労働力人口は1995年の8,000万人をピークに減少の一途をたどり、2060年にはピーク時の約半分になる予測だそうである。われわれ歯科技工士はというと「絶滅危惧種」と揶揄されるほど、減少に歯止めがかからない。 他方、スマホ、タブレット、デジタルテレビ等のデジタルデバイスの進化と、モバイル化、ソーシャル化、クラウド化が進むデジタルメディアによって知識集約産業の発展は著しい。現代は第4次産業革命の到来によって社会そのものの価値観が大きく変化しようとしているように感じる。 われわれが進むべき方向とあるべき姿として、人材 CADソフトでデザインするよりワックスアップするほうが早くて確実だという意見をよく耳にするが、それはまったくもってウソである。ただCADソフトを使いこなせていないにすぎない。いまだにフルカントゥアワックスアップを行ってからCADスキャナーに読み込ませたり、ダブルスキャンを行ったりしているのは、もはや日本の歯科技工士ぐらいではなかろうか? それらは2000年代初頭のCADソフト&スキャナーのスペックでは必要なことだったかもしれない。不足の問題とデジタル化を見据えたうえで、品質向上を図りながら生産性と収益体質の抜本的な改善を行い、歯科技工士としても21世紀型スキルを身につけるべきではないだろうか。 そのキーワードはやはり、「Digital dentistry」であろう。これは言い換えると「No more wax up」ということにもなる。診断から補綴物製作工程すべての技工スキルに固定観念を捨てて、本当にその作業工程は必要なのか、本当にその設計手順が最善なのかを見直し、改革を進めた筆者の現時点でのラボスタイルをお伝えしたい。それから20年近くたった今、スキャナーは改良され、CADソフトウェアの操作性も飛躍的に改善されている。今回はその中でも3Shape Dental Systemを主に解説していく。 弊社ではこのソフトのデフォルトをカスタマイズし、オリジナルのTooth libraryを数パターン登録してあるので(図1、2)、だれが設計してもその形態に個人の「悪いクセ」が出ることなく、安定した形態を付与できるようにしている。ハード面ではPCスペック“No more wax up”はじめに“No more wax up”「No more wax up」を具現化する環境整備図1 石膏カービングした歯冠形態を数パターン用意し、CADスキャナーに読み込ませる。図2a~d 最初にこのオリジナルライブラリを登録し、デフォルト設定しておけば、品質安定と作業時間短縮につながる。acbdQDT Vol.44/2019 May page 0783

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