QDT 2019年6月号
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22Feature article #1▲序▲蛍光とは 天然歯が蛍光性をもつことは周知の事実で、暗室において天然歯に紫外線ランプ(以降、ブラックライトとよぶ)の紫外光を当てることで容易に観察することができる。このことにより、古くから歯冠色を再現する材料(陶材やレジン材など)には天然歯の蛍光色に似た蛍光材を配合することで蛍光性が付与されている。 近年になって、国内外でとくに審美補綴物に与える蛍光性を重要視する論文が散見されるようになってきた。また、ジルコニアは歯科に導入された初期には不透明な材料で、主にフレーム材として用いられたことから、メタルセラミックスのメタルフレームと同様に蛍光性を云々されることはなかった。しかし近年、材料の改良によって透光性の高い材料が供給されてきたことから、ジルコニア単体でも補綴物が製作されるようになり、そのようなジルコニアには陶材やレジン材と同様に蛍光性が必要だと言われるようになり、実際に蛍光性が付与されたジルコニアディスクも販売されている。 このような状況の中、筆者は歯冠補綴物の蛍光性が実際にどれほどの有用性があるのかを明確にする必要性を感じるようになってきた。たしかに、暗室におい 蛍光(Fluorescence)とはルミネッセンス効果のひとつである。物質が電磁波(大雑把であるが、波長が短い順からガンマ線、エックス線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、電波などに区分されている)や電気、熱、化学反応などからエネルギーを受け取って励起され、基底状態に降りる際にその受け取ったエネルギーを特定波長の光として放出する発光現象である。 たとえば、蛍光の語源と思われる蛍(ホタル)の光はてブラックライトの紫外線を当てることで天然歯の蛍光は明瞭に見えるが、それが自然光のもとでどの程度が歯冠色に含まれているのかという観点で議論されたことはこれまでまったくなかったからである。自然光のもとで天然歯の蛍光が歯冠色に大きな影響をもつのであれば、歯冠補綴材料の蛍光をより良いものに改善すべきである。逆に、自然光のもとでわれわれの目にほとんど見えないのであれば、高価な蛍光材を用いて蛍光性を付与していることに疑問符が付くことにもなる。また、もとより筆者は、天然歯の蛍光が自然光のもとでわれわれに見えているような業界における解釈に、長年にわたって疑念をもち続けており、どうしても解明したい案件のひとつだったからでもある。 筆者は自然光下の観察条件において、天然歯の蛍光がどの程度見えているのかを明確に示す良い方法はないものかと長い間考えを巡らせていたが、今般、写真撮影の方法を工夫することによってそれを実現できることに気付いた。この方法により、自然光下の観察条件で天然歯の蛍光が見える量を明確化できたので、それらを論理的な背景とともに撮影データを供覧する。ルシフェリンという物質の化学発光であり、酵素による化学反応によって励起状態と同じ状態の物質が作られ、それが基底状態に降りる際に光(蛍光)を出す現象である。また、蛍光灯は放電によって管内の水銀を励起して紫外線を発生させ、さらにその紫外線が管内壁に塗ってある蛍光物質を励起させることで蛍光(可視光)を放出させ、これを照明光として利用するもので、文字通り「蛍光灯」である。QDT Vol.44/2019 June page 0880

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