QDT 2019年6月号
5/8

 数年前まで、二ケイ酸リチウムがセラミッククラウンの材料選択や技法の研究などにおいて一世を風靡していたが、昨今ではその勢いも衰えているように思われる。その要因の第一には明度コントロールの問題が挙げられ、抜本的な解決方法はとくに開発されず明確にされていない。次に強度の面が挙げられ、それが原因で二ケイ酸リチウムを選択してこなかった術者もあると思われるが、この点はここ数年で飛躍的に改善されて500MPaを謳うようになり、今後さらに伸びる可能性もある。インハウスでのジルコニア材料の加工には高コストなCAD/CAMシステムが必須であるが、設備投資がCAD/CAMにくらべ低コストですむプレステクニックによって加工できる二ケイ酸リチウムは、ローコスト・ハイリターンな収益源として、小規模ラボにとって引き続き魅力的な材料であり続けるだろう。よって、これからも技法の研究・改良に努めなければならない。 上述のとおり、二ケイ酸リチウムには明度のコントロールが困難という問題点がある。陶材築盛自体はジルコニアコーピングと同様の技法で行うことができるが、いかに二ケイ酸リチウムの強度が500MPaに達しようとも一般的なジルコニアの約半分にすぎず、コーピングの厚みを確保する必要がある。よって、陶材層はジルコニアにくらべて薄くならざるを得ないため、下地となるコーピングの明度コントロールが重要となってくる。モノリシックレストレーションとして用いる場合にはなおさらである。 そこで今回は、二ケイ酸リチウムの可能性をより広げるべく、グラデーションをもつマルチインゴットのためのマルチプレス法に代わる新規プレス法を用いた二ケイ酸リチウムクラウン製作の新アプローチからの技法と、上述の明度コントロールのための技法を併せて紹介する。 なお、本稿で紹介する新技法の開発において株式会社松風および各材料の製造元との関係はいっさいなく、筆者個人の責任で行っていることに留意されたい。読者諸兄におかれても、実際に応用する場合にはご注意いただきたい。はじめに歯科技工士・浜崎セラミストINC./セラミストクラブ代表/(株)松風上級アドバイザー徳島県徳島市国府町池尻37-3浜崎信夫 Nobuo HamasakiFeature article ♯3セラミッククラウンの技法を科学するPart 4:二ケイ酸リチウムプレスクラウン製作の新アプローチからの技法

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る