QDT 2019年6月号
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78Feature article ♯31.マルチプレス法に代わるプレス法「キュービックプレス法」の紹介 二ケイ酸リチウムには、単色のインゴットのための通常のプレス方法と、Ivoclar Vivadent社が販売しているグラデーションインゴット(IPS e.maxプレスMultiインゴット。以下、マルチインゴット)のためのマルチプレス法の2種のプレス法が存在するが、その技法はすでに多数の文献で紹介されており、製作法の基本的なガイダンスについて述べるならばすでに筆者が立ち入る隙のないほどに確立されている。しかし、その先の理論はまだ完成形ではなく、進化の過程にあるのではないかと筆者は思い立ち、研究を開始するに至った。 今回の研究課題は、「マルチプレス法の問題点とその解決技法(本項)」と、「二ケイ酸リチウムクラウンの明度調整技法とそのレイヤリングクラウンの製作方法(次項)」である。それではまず、前者について述べる。1)従来のマルチプレス法における問題点 マルチプレス法を構成する要素は、右図(図1)に示すとおり「二ケイ酸リチウム製マルチインゴット」「埋没材」「ワンウェイプランジャー」「アロックスプランジャー」の4点であり、軟化したインゴットを長軸(垂直)方向に加圧して、水平方向に圧入していくものである。以下に、筆者が現在考える問題点について示す。①透明層の圧入に失敗する場合がある プレス時に、インゴット上層にある透明層がワンウェイプランジャーと埋没材内面の隙間に逆流し、透明層の一層すべてがバリになりクラウン状にプレスされず、二層目のエナメル色層もクラウン咬頭部にわずかにしか残らない場合がある(図2)。②インゴット位置のずれがグラデーションの乱れにつながる インゴットの中心位置がプレス圧によって下方向に移動して(図3)、クラウンとの位置・距離関係のずれが大きくなりプレス層に不均一なグラデーションの乱れが生じる場合がある。とくに前歯部症例で乱れが生じるとステイン法での修正は困難であり、再製の原因となる。③インゴットの透明層が少ない 標記は①とも関連するが、そもそもマルチインゴットのエナメル層が少ないことも問題のように思われる。図4に、オリジナルのマルチインゴットと、エナメルマルチプレス法を構成する要素図1 マルチプレス法を構成する要素。アロックスプランジャー、ワンウェイプランジャー、埋没材、二ケイ酸リチウム製マルチインゴット、の4つの要素からなる。アロックスプランジャーワンウェイプランジャー二ケイ酸リチウム製マルチインゴット埋没材QDT Vol.44/2019 June page 0936

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