QDT 2019年7月号
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63インプラントオーバーデンチャーを成功させる考え方と製作ステップ(前編)図1a、b 齋藤善広先生は、吸着する上下顎総義歯を片側咀嚼した場合の義歯の傾きは4°、移動量は3mmであったと報告している2(参考文献2より引用して作図)。図2a、b IODにすることで、吸着力の弱い症例において維持力が向上し、把持効果から義歯の動きを最小限にすることで顎堤吸収のスピードを抑えることが可能になる。動かないという安心感で咀嚼スピードが向上し、咀嚼効率の向上にも繋がる。図3 ボーンアンカードブリッジと比較したIODの利点。①インプラントの埋入位置に影響されずに審美的・機能的なアーチフォームを再現できる②唇頬側の失われた歯肉部を再現することにより、顔貌が回復し食渣が溜まりにくくなる③舌側の失われた歯肉部を再現することにより、嚥下・発音機能を回復できる④可撤式であることから清掃が容易であり、修復が簡便であるボーンアンカードブリッジと比較したIODの利点であったとしている。筆者と同様にJPDAに所属し、指導医を務めている齋藤善広先生(くにみ野さいとう歯科医院)は、吸着する上下顎総義歯を片側咀嚼した場合の義歯の傾きは4°、移動量は3mmであったとし(図1)、上顎シングルデンチャーにおいても上下顎総義歯と同等の4°の傾きであったと報告している2。 これらの総義歯の動きに対してインプラントは効果を発揮する。つまり、吸着力の弱い症例において維持力を向上させ、把持効果から義歯の動きを最小限にすることで顎堤吸収のスピードを抑えることが可能になる。動かないという安心感は咀嚼スピードを向上させ、咀嚼効率の向上に繋がる(図2)。これは前述した筆者が考える義歯治療のゴールと直結する効果と言える。どんなに技術を駆使して印象採得を行い、排列位置などを工夫して安定する総義歯を製作したとしても、IODほどの患者満足を得ることはできない。また、インプラントの埋入位置や本数によっては支持・把持の効果も期待できる。インプラントの本数を増やせば固定性のボーンアンカードブリッジにすることも可能であるが、高度顎堤吸収症例などにおいて失われた口腔組織部を回復できないことや清掃が難しいことがボーンアンカードブリッジの問題として挙げられる(図3)。 本稿では前後編に分け、IODを成功させるための考え方と製作ステップについて解説していく。前編となる今回は、インプラントの本数によってIODの考え方がどのように変化するのかについて解説していきたい。aabbQDT Vol.44/2019 July page 1095

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