QDT 2019年8月号
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48Feature article #2 われわれ歯科技工士が歯科技工士専門学校で習得する総義歯を含めた製作技術のすべてがClassⅠである。もちろん限られた期間で多くの補綴物の製作手順や理工学などを学ぶことは大変なことであるから致し方のないことかもしれない。 しかし、筆者が日常的に行っている自費の総義歯製作においては、意外とClassⅡやClassⅢの症例が多いことに驚かされる。立ち会いで歯科医院へ伺って患者がそれまで使用されていた義歯を観察すると、ClassⅡやClassⅢの患者であるにもかかわらず、ClassⅠの排列が行われている義歯をよく目にする。そしてそれが原因でリップサポートが不自然、下顎の吸着が得られていない、咀嚼が上手くできないなど、義歯の不調を訴えている患者も少なくない。そして不調があっても「義歯とはこんなものだ」と諦めている方も多く存在しているように感じる。歯科技工物は歯科医師の指示により製作されるものであるが、歯科医師もまたClassⅡやClassⅢの患者の補綴物製作に対し、的確な指示を出せていないことが多いのではないだろうかとも感じる。 筆者はBPSシステム(Ivoclar Vivadent)のライセンスを取得する際に、佐藤幸司先生(佐藤補綴研究室)から総義歯学の多くを学ばせていただいた。その中で幸運にもClassⅡやClassⅢについての基本的な概念を学ぶ機会も得ることができた(図1)。その後、BPS国際インストラクターであったカナダのデンチュリストであるSandra Goerger氏から当時白水貿易で行われていたBPSアドバンス実習コースにてClassⅡとClassⅢの排列手技を実際に学ぶ機会を得た。ClassⅡのディープバイトとClassⅢのクロスバイトの排列法は、それまでClassⅡやClassⅢの症例に悩んでいた筆者にとって衝撃的な経験となった。現在ではそのような実習コースがないのが残念であり、若い歯科技工士がClassⅡやClassⅢの考え方について学ぶ機会などが今後もなくなってしまうのではないかと危惧している。Feature article #2須藤哲也Defy千葉県松戸市西馬橋3-2-2 田川ビル201インプラントオーバーデンチャーを成功させる考え方と製作ステップ後編:ClassⅠ、Ⅱ、Ⅲを理解して、機能的に優れた補綴物を製作するためにはじめにQDT Vol.44/2019 August page 1242

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