QDT 2019年10月号
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図1、2 治療開始時の状態。顔の解剖学的構造として歯が短すぎる。咬合平面が右下がりに傾斜。ネガティブスマイルライン。治療開始時 患者は48歳男性。軍での戦闘任務中の事故により、歯科補綴治療を受けた。当時施された修復装置を取り替える目的で、Dr. José Alberto Valenzuela Sooの歯科医院を訪れた。患者は8年間、上顎に全部床義歯を、下顎に複数のレジンクラウンを装着しており(図1、2)、₆にはインプラントが埋入されていた。上顎の義歯はこの間に安定性を失い、咀嚼困難となっていた。修復装置には他に機能的不備もあったため、患者は自発的に笑うことも他の感情的な反応もできず、社会生活に影響をきたしていた。軍友との会合に招待されたことが、新しい歯科治療を望んだ主な理由であり、Dr. José Alberto Valenzuela Sooの歯科診療において、患者はより審美的であること、自然な笑顔ができること、それによって自尊心を取り戻すことを願っていた。 担当医による診断所見:歯が短すぎ顔に対する割合が不自然である。上顎の切歯が内側に傾いている。上唇が下唇より薄い。右下がりに傾いた咬合平面とネガティブスマイルライン。課題と治療アプローチ この症例の課題:大部分の歯の解剖学的形態の再構築と、その結果としての顔貌の改善、自信の強化と自然な感情的表情の回復(例えば笑顔)。担当医は、審美的側面を機能的要件と一致させたいと望み、何よりも笑った時に上顎歯列が下唇のラインに沿うようにと考えた。患者および担当医の要求を満たす結果を得るためには、歯を適切な位置に、的確なサイズおよび解剖学的構造に従って配置しなければならなかった。検査の結果、上顎にはインプラント支持構造(₆、₄、₂₁、₂、₄、₆)のための十分な骨があることがわかった。これは顔面および唇周辺の軟組織の支持にもつながる。下顎には、アンレー(₅₄、₄)、天然歯支台のクラウン(₆、₂₁、₁~₃、₅)、インプラント₆およびベニア₃から成る複合修復が選択された。治療計画には歯科技工士でもあるDr. Arturo Godoy Sentíesによる支援を受け、担当医がインディビジュアルトレーニングの一環としてZirkonzahnの歯科技工士たちと協力してこの補綴修復を完成させた。 Dr. Godoyの歯科技工士チームは、まず患者にとって最良の材料は何かという問題の探求から始め、最初に金属を除外した。前装面の破折を避けるために、約1,200MPaの曲げ強度を有するPrettau® Zirkonの使用が検討されていたが、歯をより自然な色合いにするため、セラミックス築盛なしのモノリシック構造で製作するという考えは当初からなかった。下顎には高透過率のPrettau® Anteriorが選択された。初期の治療ステップとプロビジョナルレストレーション まずラボで、モデルスキャナーを用いて既存の上顎補綴をデジタル化した。このスキャンデータはデジタルワックスアップの基礎となり、ミリングユニットでプロトタイプを製作するのにも役だった。後者は口腔21

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