QDT 2019年11月号
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57座談会 Virtual Articulatorの到達点と未来展望:後編難羽:4名の先生方、プレゼンテーションをありがとうございました。それでは、プレゼンテーションでお話しいただいた内容を基にディスカッションを進めていきたいと思います。 ケースプレゼンテーションの中で、単冠のケース、前歯のケース、臼歯のケースなどをご紹介していただきましたが、これらをまとめてお話ししてしまうと読者の方も理解しにくいかなと思いますので、臼歯単冠のケース、臼歯部複数歯のケース、それから前歯を含むケースという3つに分けてディスカッションをしていきたいと思います。 それでは最初に臼歯の単冠、たとえば第一大臼歯だとして、山崎先生はVirtual Articulatorを使用するメリットは何だと考えていますか?山崎:そうですね。もしVirtual Articulatorを使わずにデザインを行っていき、そこからミリングなどで補綴物を製作したとすると、結局、ミリング後に自分の手で多くの調整を行わなければいけなくなってしまいます。ですから、まずは基準となるものとしてVirtual Articulatorはあったほうが良いと思います。伊藤:下顎運動時の調整量を少なくしたいということですよね。私の臨床で臼歯の場合、模型レスの場合はほぼフルジルコニアクラウンなので、Virtual Articulatorを使わずに製作すると下顎運動時の調整量が多くなり非常に大変になってしまうのです。難羽:私はアナログ時代に咬合理論を勉強してきて、実際に臨床の中ではほとんどのケースでアナログの咬合器ではファセットをトレースできないということを経験してきました。Virtual Articulatorにおいてもそれは同様ではないかと思っています。そういったところで、長谷川先生のヴァーチャルモデルマネージメントという考え方に興味があるのですよ。長谷川先生、簡単にご説明していただけないでしょうか?長谷川:私も、あくまでも現在の咬合器は近似値再現であるため、それを使用している以上、難羽先生がおっしゃっているようにファセットが合わないことはあると思います。ただ、できるだけ近づけることもできるだろうと考えています。たとえば、咬合器上の運動ではしっかりと離開しているにもかかわらず模型上ではファセットが確認できるという場合、実際の口腔内では干渉が起きているということが考えられます。それが咬合器で再現できていない原因としては、マウントの方法なのか、近似値再現のために顎運動が100%再現できていないからなのか、さまざまな理由があると思います。難羽:特に第二大臼歯の場合は、模型の変形の可能性もありますよね。長谷川:おっしゃるとおりです。もちろん印象が変形している可能性もあると思います。そういったとき、おそらくアナログの咬合器では経験値からくる勘仕事で模型を削合したりしながら調整していたと思うのですね。ヴァーチャルモデルマネージメントは、これまで模型上でファセットが合わないときに、アナログの咬合器にマウントされた模型を削ったりしながら早期接触部分を意図的に取り除くことで調整していたような方法をVirtual Articulatorでも行うものになります(図1)。難羽:ありがとうございます。ただ、単冠のケースでそれだけ時間をかける費用対効果があるのかということも考えるのですがいかがでしょうか?伊藤:私はそんなに時間はかけていないですね。ほとんどのケースが、長谷川先生がプレゼンテーション(9月号)でおっしゃっていたようにVirtual Articulatorにボンウィルトライアングルでマウントし、そこからデザインしていけばある程度はファセットもついてくれると思っています。それで干渉するところを調整していけば、口腔内でもほぼ調整がない状態になっています。白石:私もそれほど時間はかからないですね。私の場合、アナログ時代の経験から、歯列を観察すると「ここは干渉するな」というところが見えてきますので、そこはデザイン時にも気をつけて調整していきます。難羽:ということは、単冠におけるVirtual Articulatorの現在のVirtual Articulator:臼歯単冠のケースQDT Vol.44/2019 November page 1717

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