QDT 2019年11月号
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73リモートデスクトップソフトで広がるチェア‐ラボコミュニケーションの可能性 われわれ歯科技工士が歯科医師の指示のもとで補綴物を製作するとき、院内ラボの場合には歯科医師や患者と直接コミュニケーションを図ることができる。一方、院外の場合は何らかの伝達手段により歯科医師とのコミュニケーションが行われたとしても、患者とのコミュニケーションは希薄になってしまう。 院外ラボでも自由診療であればシェードテイキングなどで歯科医院に出向くチャンスがある。患者と雑談を交わしつつ色調の確認を行っているときなどに、ちょっとした訴えや生活習慣に関する話を耳にするこ1.対面によるコミュニケーション期(~1975年ごろ) 技工指示書による指示と、受注・納品時に対面による直接指示を受けることでコミュニケーションが行われていた。商圏は主に近隣から自動車または電車による行動範囲であった。2.物流変革期(1976年~) 宅配便の普及が始まり、商圏が宅配便の配達圏まで広がった。宅配便による取引により、コミュニケーションの手段は電話と技工指示書になった。3.電話通信網発達期(1981年~) スケッチなどによる情報の伝達や電話通信網の発達により、ファクシミリがコミュニケーションツールとして加わった。この時期、歯科技工界においては『ザ・メタルセラミックス』(山本 眞著,クインテッセンス出版,1982年)の発刊に端を発し、色調再現、自然な歯冠形態が重要視され始めた。技工指示書などへの書きとで、これから製作する歯の形態や患者が望んでいる色調など、技工作業に役だつヒントを得ることができる。しかし本来、歯科技工士は患者の利益になる補綴物を提供する立場にありながら、このように患者の要望に沿って製作する機会は稀有ではないだろうか。 本稿では、補綴物製作における過去から現在までのコミュニケーションの変遷をたどり、問題点を考え、歯科技工士・歯科医師・患者・歯科衛生士の四者のコミュニケーションの大切さを考察し、今後のあり方を提案したい。込みによる色調の指示のほか、カラーリバーサルフィルムによる情報の伝達が行われるようになった。4.デジタル機器創成期(1995年~) パソコン用基本ソフトウェアであるWindows 95(マイクロソフト)のブームと同時期に、カシオ計算機から安価なデジタルカメラ「QV-10」が発売となる。電子メールは普及の兆しを見せるにとどまり、業務で利用されることは少なかった。また、デジタルカメラも色調の伝達に使用できるには至らない段階であった。5.ブロードバンド普及期(2000年~) Windows 2000(マイクロソフト)の発売とブロードバンドの普及(2001年)にともない、パソコンによる電子メールが普及し始める。低価格・高画質なデジタルカメラが発売され始め、歯科においても色調などの情報の伝達に用いられ始めた。はじめにチェア‐ラボコミュニケーションの変遷(特にハードウェアの進化に着目して)QDT Vol.44/2019 November page 1733

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