QDT 2019年12月号
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27インプラント治療 その前に:続・今こそ再考したいカンチレバージルコニア接着ブリッジという選択肢 ブリッジとは少数歯欠損に対して支台歯間を連結し、形態、機能ならびに審美性を回復する橋義歯(xed partial denture)である。従来型ブリッジでは支台歯の切削量が多く、そのため健全なエナメル質を失うこととなる。一方で、インプラントは従来型ブリッジのように支台歯に侵襲を及ぼさないが、大がかりな外科処置を必要とする。 一方、接着ブリッジは支台歯の切削量がきわめて少なく、大がかりな外科処置も必要としないことから、補綴歯科治療であっても必要最小限の侵襲で対応するMinimal Intervention(MI)1のコンセプトを具現化することができる。 その始まりは1973年に発表されたRochette Bridgeであり2、その後改良を重ねて1980年代初頭にはMaryland Bridgeとして日本と海外でほぼ同時に臨床応用されはじめた3。紹介されると、日本では一大ムーブメントを巻き起こしたが、多くの一般臨床家からは装着後の脱離の頻発を理由に期待外れという評価が下されたのである。この時点では、接着ブリッジは一度廃れたと言っても過言ではないであろう。 日本補綴歯科学会はMIコンセプトに基づいて2007年に「接着ブリッジのガイドライン」を作成し4、その結果2008年には接着ブリッジが保険適応(標準医療)となり現在に至っている。2017年には「接着ブリッジのガイドライン改訂版」を作成した5。その中で、海外にはオールセラミックによるカンチレバー接着ブリッジの適応を支持する論文が多く、その中からエビデンス評価に値する文献11編が挙げられている。しかし一方ではカンチレバー接着ブリッジが2リテーナー型と比較して生存率が劣るとしたメタアナリシスによる報告をもとに、現段階ではその適応には慎重になるべきであるとも述べている。したがって、カンチレバー接着ブリッジが日常の補綴臨床に定着するのは程遠いと言わざるを得ないであろう。 海外では、接着ブリッジは少数歯欠損に対する有効的な治療法として一般臨床家に定着しており、歯学部教育にも積極的に取り入れられている6、7。近年は、ジルコニアといった強度に優れた非金属材料の開発により、審美性に優れたジルコニアフレームによる接着ブリッジも数多く見られるようになった。 25年以上も前からセラミック接着ブリッジを手がけており、接着ブリッジの第一人者であるドイツKiel大学のKernは、2017年に「Adhäsivbrücken Minimalinvasiv-ästhetisch-bewährt」を出版し、カンチレバージルコニア接着ブリッジは必要性のある存在と唱えている8。Kernの補綴技工を担当し、ドイツ歯科技工マイスターでもある大川は、2017年に日本で初めてKernの症例を歯科技工士の立場から詳しく紹介し、患者にとって欠かせない治療法であると説いた9。 筆者らは、前歯部1歯欠損において、インプラント治療以外にもカンチレバージルコニア接着ブリッジという選択肢も考慮するべきであるとし、日本人の歯科医師にドイツにおけるカンチレバージルコニア接着ブリッジ治療を施した症例を報告している10。 今後、われわれは、1歯欠損における補綴歯科治療に対してKern考案のカンチレバージルコニア接着ブリッジ治療が価値のある存在であることを日本の一般臨床家に進言していきたいと考えている。Part 1:序論(中村)❖はじめにQDT Vol.44/2019 December page 1829

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