QDT 2019年12月号
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95トップダウントリートメントをよりスムーズに行うための5つのポイント フルマウスにおいて診断用ワックスアップを行うにはどのような情報が必要になるだろうか。顔貌写真はもちろん必要である。しかし、いかに正しく撮影された顔貌写真であっても、二次元の情報から完全に三次元のイメージを構築しきるのは困難なことが多い。イメージと現実の間にギャップがあると、作業工程を後戻りしなければならなくなったり、最悪の場合は「妥協」したりといった結果にも繋がりかねない。 筆者の場合は、ほとんどのケースで人工歯を排列したワックスデンチャーを口腔内に装着した状態で顔貌写真を撮影していただくようにしている。フルデン 有歯顎であれば硬組織である歯を基準にしてDICOMデータとSTLデータをマッチングさせることは容易である。しかし無歯顎の場合、模型をスキャンした歯肉のデータと歯科用コーンビームCT(以下、CT)で撮影された骨の上にうっすらと映る歯肉をマッチングさせなければならないため、DICOMデータとSTLデータを正確にマッチングさせるのは容易ではない。マッチングさせるために大変な労力を要し、それでも上手くマッチングできない場合、CT撮影時のエチャーを製作する際、バイト採得後、いきなり金属床を完成させるという流れはあり得ない。なぜなら咬合や審美の面で何も確実なものがないのにもかかわらず金属床を設計し、フィニッシュラインを決定することはできないからである。それは固定式のインプラント補綴でも同様である。そのような流れで製作された補綴物に機能美という概念はなく、人工臓器を製作している歯科技工士が製作すべき補綴物ではない。機能と審美の2つを両立することで初めて補綴物は患者の口腔内で生きてくるのではないだろうか。そのためにはできるだけ正確な情報を得る必要がある。ラーなのか、印象採得時のエラーなのかが分からずに、今までマッチングに費やした時間がすべて無駄になる可能性もある。 このようなトラブルを避けるため、筆者は造影性のあるレジンを使用して基礎床を製作してCT撮影を行っている。この基礎床を使用することで歯肉のラインを明確に確認することができ、DICOMデータとSTLデータを正確にマッチングすることができるようになった。Point1診断用ワックスアップ前のバイトの確認と修正、顔貌との調和の確認Point2DICOMデータとSTLデータをマッチングさせるための工夫①診断用ワックスアップ前のバイトの確認と修正、顔貌との調和の確認②DICOMデータとSTLデータをマッチングさせるための工夫③インプラント埋入シミュレーションにおける歯科医師とのディスカッション④サージカルガイドの発注をラボで行う⑤ピックアップ印象から製作された模型のマウント図1 筆者が考えるトップダウントリートメントをスムーズに行うための5つのポイント。トップダウントリートメントをスムーズに行うための5つのポイントQDT Vol.44/2019 December page 1897

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