QDT 2020年2月号
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35補綴専門誌であえて考える 今求められるMIとCR直接修復(後編)それぞれについて解説したい。1)Ⅲ級、Ⅳ級、Ⅴ級窩洞症例 CR直接修復治療でもっとも多い適応症例であるといえる。ポーセレンラミネートベニア(以下、PLV)を使用してこれらの窩洞を修復する際は、ほとんどの場合唇側全面や切縁を被覆するため、形態の自由度や表面性状の付与などが行いやすい。また長期的に光沢性が維持される。しかし象牙質の露出量が多かったり、隣接面の窩洞が大きく隣接舌側のフィニッシュラインの設定が困難になったりする場合には、PLVの適応が困難になる場合もある。またPLVによる治療はPLVの脱離や破折などの際の再介入がCR直接修復治療と比べると困難であり、かつコスト面でのマイナスの要素も大きい。 CR直接修復治療の場合は、窩洞部位による治療の制限がなく、歯質を最大限に保存することが可能である。窩洞にアンダーカットが存在していても充填を行うことができ、その後の脱離などのリスクは非常に少ない。一方、PLVの場合には、Ⅲ級窩洞などでは挿入方向の問題などにより形成量がどうしても増加してしまい、結果としてⅣ級窩洞のような支台歯形成となる。CR直接修復治療の大きな魅力は、アンダーカットを残したまま充填できることであろう。ただし、窩洞が小さくても唇側面・隣接面・舌側の多部位にわたる場合、充填後の研磨が困難になり、構造力学的な点においても、長期的な予後を得るのが難しい場合がある。また、PLVなどと比較すると長期的な色調安定性には劣るなどの欠点も存在する。2)正中離開、歯間空隙の閉鎖 正中離開の治療法としては、CR直接修復治療、PLV、クラウンによる歯冠修復治療、矯正歯科治療などが挙げられる。 矯正歯科治療は歯牙の切削の観点ではもっとも低侵襲な治療であるが、矯正用のブラケットやワイヤー装置による審美性の阻害、不快感および治療期間などの問題点がある。また上下顎の歯冠幅径の不調和により歯間空隙が存在する場合、矯正歯科治療だけでは空隙の閉鎖が行えない場合もある。 また、クラウンによる歯冠修復治療は、形態と色調の回復にもっとも有効な治療法である。CR直接修復治療やPLVでは歯肉縁下からの形態をコントロールすることは困難であるため、この点では大きな利点といえる。ただ、クラウンによる歯冠修復のためには大量の歯質の削合が必要になるため、ミニマルインターベンション(MI)の観点から正中離開や歯間空隙の閉鎖には選択されなくなってきている。 PLVによる正中離開や歯間空隙の閉鎖を行う場合、唇側面を形成し歯冠形態全体の変更を行う場合と、隣接面のアンダーカットのみを形成し空隙のみを閉鎖する場合およびノンプレップで修復する場合がある。修復物が小さいと位置づけが難しくセメンテーションが困難になるという欠点がある。 CR直接修復治療では最大限歯質を温存した治療が可能である。また術後の脱離や破折などのトラブルにも対処しやすい。反面、プロキシマルコンタクトの付与や歯肉縁下からの形態付与が非常に困難である。また治療期間は短期間ですむが、1回のチェアタイムが1)Ⅲ級、Ⅳ級、Ⅴ級症例2)正中離開および歯間空隙の閉鎖3)ダイレクトベニア、矮小歯の修復治療4)犬歯尖頭、下顎前歯切縁のビルドアップ5)その他(根管治療・根管漂白後の充填、インプラントのアクセスホールの充填など)表1 前歯部CR直接修復治療の適応。QDT Vol.45/2020 February page 0177

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