QDT 2020年2月号
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68 口腔内に調和する歯冠修復物を製作するためには、当然のことながら色調の調和も必要であるが、同時に形態や表面性状を模倣することも重要である。しかし、個々の患者の噛み合わせや歯列に合わせつつ、天然歯形態と表面性状を模倣して歯冠修復物を製作することは容易ではない。そのためには高い観察力と表現力が求められる。 その観察力と表現力を身に付けるためには、カービングなどで多くの天然歯を模倣する訓練が有効であると筆者は考えている。なぜなら、どの天然歯においても同じものは存在しないからである。外形や隆線の流れや豊隆など、すべての天然歯は異なる特徴をもっている。天然歯の表面性状を模倣した歯冠修復物を製作するためには、まず目標とする天然歯の特徴を掴む必要がある。そのために必要になるのが目標とする天然歯を観察する力であり、カービングなどで多くの天然歯を模倣していく中で、必ずこの観察力は養われていく。また、その観察によって掴んだ特徴を歯冠修復物に表現していくための技術も当然必要である。この表現力に関しても、特徴が異なる多くの天然歯の形態や表面性状を模倣していくことで養うことができる。 本稿では、筆者が天然歯の形態と表面性状を模倣して中切歯の歯冠修復物を製作する際、どのような点に着目しているのか、そして実際にそれを表現するためにどのようなステップで作業を行っているのかについて、異なる天然歯の特徴をもつ3つのケースを例に紹介したい。その中で昨今ではモノリシックジルコニアのケースも増えていることから、モノリシックジルコニアクラウンに対してどのように形態と表面性状を付与しているのかについても紹介したい。はじめにFeature article #2中切歯における形態と表面性状の模倣天然歯列に調和させるための「観察力」と「表現力」のポイント中村 心 DENTAL JAPAN 侍/大阪府大阪市中央区博労町1-8-1 will博労町ビル12F大阪セラミックトレーニングセンター非常勤講師QDT Vol.45/2020 February page 0210

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