QDT 2020年4月号
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65メタルセラミックスの色調表現を応用したオールセラミックス多色築盛図1 天然歯の色構成エリア。天然歯は主に半透明な象牙質と半透明なエナメル質で構成されているので、必然的に半透明に見える。図2 補綴装置の色構成エリア。補綴装置(特にメタルセラミックス)の場合、最終的に天然歯のような半透明を目指すのであれば、デンティン陶材は圧倒的に不透明なものを、そしてエナメル質は天然歯のそれよりもより透明なエナメル陶材で表現する必要がある。 天然歯の色構成は半透明なエナメル質と半透明な象牙質から成り立っているため必然的に半透明に見える(図1)。しかしわれわれセラミストは、フレームを介したうえで多くて2mm程度のクリアランスの中で色調表現を行うことになる。この事実を無視して色を組み立てようと思うから「もっとクリアランスが欲しい」ということになる。たとえばトレーニングのために歯根付きポーセレンを製作する場合には、天然歯の構造をそのまま模倣して不透明度が異なる陶材を特に意識することなく築盛しても、それなりに表現ができてしまう。なぜならそこにはセラミッククラウンのフレームのような天然歯の色調を表現するうえで不必要な要素が存在しないからである。 セラミッククラウンにおける色調表現においては、マンセルの色相関図における色相・明度・彩度に加え、もうひとつの要素として不透明度という三次元的な要素を組み込む必要がある。なぜならわれわれセラミストが行うのは、決められたクリアランスの中で三次元的に色を組み立てていく作業だからである。表層に被せるトランスルーセント陶材も最終的な色調表現の一要素になるのは当然なのだが、最深層にしっかりと不透明度を与えたデンティン陶材を使用し、最表層のトランスルーセント陶材との「距離」を稼ぐことが、鮮やかな色調と透明感(ここでは透明度と透明感を混同しないで欲しい)を表現するためには必要であると筆者は考えている(図2)。しかし、このセラミッククラウンの重要な構成要素となるデンティン陶材自身は、半透明に設計されているメーカーが多いのが現状である。それゆえに厚みをもたせなければ色調が淡くしか表現できず、結果、「もっとクリアランスが欲しい」という悪循環に陥るのである。 その中でCreation陶材は他社メーカーと比較してデンティン陶材が不透明に設計されている。これをさらに発展させ、目指すべきデンティン陶材の色と限りなく近い色のオペークを使用することで、不必要な色調を消しつつ最深層からより少ないスペースで不透明な色調を付与することができ、最表層のトランスルーセント陶材までの「距離」が稼げるのではないだろうかという考えに至った。筆者はこの「距離」の考えをオペーク処理が必須なメタルセラミックスにおいて実践していた1が、この考えはマスキングが必要な支台歯に対するオールセラミックスにおいても応用可能と考えている。 本稿では、筆者がオールセラミックス用陶材Creation ZI-CT(Creation Willi Geller,日本歯科商社)を使用するうえで、どのようにメタルセラミックス用陶材Creation CC(Creation Willi Geller,日本歯科商社)のペーストオペークを応用しているのかについて紹介したい。はじめに12QDT Vol.45/2020 April page 0491

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