QDT 2020年5月号
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63とはなかった。だが、日々の臨床においてはろう堤製作に多くの時間を割いて作業を行っている。正確なろう堤の製作は正確な補綴装置を製作するためのファーストステップであり、またそうして製作された正確なろう堤は、咬合採得を行うためだけではなく、患者固有のアーチフォームや審美性等、多くの情報を得るための装置である。しかし、現状臨床において使用されている多くのろう堤は単に咬合採得をおおまかに行うための「物」として製作されており、「装置」としての役割を備えていないことが多いと考えている。装置とは「目的に合わせて仕掛けなどを備え付ける」ことである。筆者は、プロビジョナルレストレーションを製作してから修正を加えることで患者に合わせるのではなく、プロビジョナルレストレーションでの修正を極力少なくするためにろう堤が重要なのだと考えている。 本稿では、前編にろう堤を正確に製作する手技を、後編に正確なろう堤を用いた咬合採得・咬合器付着・排列について解説を行う。今回の内容をまとめてみると、フルブリッジを行う歯冠修復専門の歯科技工士だけではなく、義歯専門、とくに現在保険の総義歯を製作しているような若い歯科技工士の方にもぜひ理解していただきたい内容になったと感じている。経験やキャリアの異なるさまざまな方に参考にしていただければと考えている。なお、偏った内容にならないように、またできるだけ義歯の知識が浅い方にも理解していただけるように細心の注意は払っているが、冒頭で述べたように筆者自身が歯科技工士専門学校卒業後に歯冠補綴を製作したことがないため、細かな点で行き届かない部分もあるかもしれないことをご理解いただければ幸いである。QDT Vol.45/2020 May page 0631

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