QDT 2020年5月号
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102 リマウントには2つの意図があると筆者は考えている。ひとつは義歯製作時に顎位と咬合の安定を得るために行うリマウント。もうひとつは義歯装着後、経時的に変化した顎位に対応するためのリマウントである。リマウントは口腔内と咬合器上の顎位のズレなどを補正し、もっとも安定して噛める位置を模索するために行う(図1)。 術前の旧義歯においてよく見受けられる問題点は「噛めない。義歯が外れる。見た目が悪い」の3つである(図2)。この中でなぜ噛めないのかを考えると、術者の咬合調整の問題の可能性もあるが、それ以前に適切な咬合採得ができていない状態で総義歯を完成させてしまった可能性も高いと推測できる。適切な顎位で咬合採得が行われていない状態で総義歯を完成させてしまうと、完成義歯を口腔内にセットした際に義歯の安定が得られず、咬合調整を行っているうちに人工歯の咬頭展開角が失われ、横滑りしやすい平面的な咬合面になってしまうこともある。それに加えて義歯内面の適合が悪い等の悪条件が重なることで、患者が義歯を口腔内で安定させることができず、垂直的な開閉口運動ができないことから前噛み傾向になり、本来ClassⅠの咬合状態が再現できるはずの患者であるにもかかわらず、ClassⅢのような咬合状態になっている患者が多く見受けられる。 今回からは、前回までに解説した「咬合器付着」「咬座印象」の工程で適切な咬合平面の設定が行われ、良好な義歯床辺縁形態や内面の適合が得られた上で行われる最後の重要な項目である「リマウント」について解説していきたい。はじめに つのポイントを押さえてシンプルに高精度の総義歯を製作する─保険・自費を問わず活用できる、工程の中で補正していく総義歯製作の考え方─連載第5回 3つのポイント その3:リマウント①3五十嵐 智 歯科技工士・correct-design/埼玉県さいたま市大宮区吉敷町1-91 成田ビル1F4Fホール午前10/18(日)講演者論文QDT Vol.45/2020 May page 0670

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