QDT 2020年6月号
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32 人の第一印象にもっとも大切な表情は笑顔であるといわれている。笑顔を構成する主要な組織は歯および周囲軟組織であることから、歯科医療は人の印象形成に対し重要な役割を担っている。以上の背景から、現代の歯科治療においては硬組織である歯の審美性はもとより、軟組織の審美性(pink esthetic)が重要視されつつある。Hochmanらは87%の人がスマイル時に歯間乳頭が暴露していることを明らかにしており1、前歯部における歯間乳頭の存在は審美的に大きな影響を与える要素のひとつと考えられている。しかし、歯間乳頭は加齢、歯周疾患、不用意なブラッシングやキュレッタージ、オーバーラップしていた歯を矯正した後など、さまざまな要因により喪失してしまう場合がある2-4。さらに、一度失われた歯間乳頭を再建することは困難であるといわれており、治療のプロトコールが確立されていないのが現状である。 そこで、筆者は今回の前・後編にわたる論文を執筆するにあたり、歯間乳頭の再建に関する文献を網羅的に蒐集することにした。その結果、歯間乳頭を再建する方法には、外科治療、矯正治療、補綴治療、ヒアルロン酸による治療などさまざまなアプローチがあることがわかった。現時点においては、どの方法においても確立されたエビデンスは存在しないように感じたが、過去の文献には各手法の利点・欠点およびキーポイントが豊富に記載されていた。この前編では、筆者が実施した文献レビューに症例を交えて解説していく。緒言髙岡亮太 Ryota Takaoka歯科医師・大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 クラウンブリッジ補綴学分野大阪府吹田市山田丘1-8Feature article #1集学的アプローチによる歯間乳頭の再建前編:歯間乳頭再建に関する文献レビューと外科的アプローチについて2Aホール午後10/17(土)講演者論文QDT Vol.45/2020 June page 0746

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