QDT 2020年6月号
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66Feature article #2須藤哲也Defy千葉県松戸市西馬橋3-2-2 田川ビル201はじめに歯冠補綴を製作する歯科技工士がフルブリッジの製作で失敗しないために知っておくべき総義歯学後編:正確なろう堤を用いた咬合採得、咬合器付着、排列位置 前編では規格模型の重要性および正確なろう堤の作り方とその役割について述べさせていただいた。 しかし、前編で製作したような平均値で製作するろう堤は診査・診断を行う際には非常に重要であるが、正確な排列位置を決定するためには患者個々の口腔内や顔貌に合わせてろう堤の修正を行わなくてはならない。修正が必要ない場合は平均値に合う患者と判断することができるが、筆者の症例において多くの場合は修正が必要である。たとえば、若い患者であれば前編で述べたろう堤の平均値で切縁の位置が合致する場合も多いが、高齢になるにつれて上顎の切縁は見えにくくなる。表1は、古い文献ではあるが年齢に対する歯列と口唇の関係を示している。前編で述べたろう堤製作時に用いた平均値は20代に多い口唇から上顎前歯切縁が審美的に見えるものであるが(表1〇部)、実際は60代以上になると多くが上顎ではなく下顎前歯切縁が見えるようになる(表1〇部)。天然歯が残っている高齢者には、下顎前歯切縁は見えるが上顎前歯切縁は見えない方が多いと感じるはずである。これは高齢になるにしたがって筋肉が弛み、頬や口唇が下がることに起因すると考えられる。特によく噛めない総義歯を使用している患者の場合、咬筋などの口腔周囲筋が弱くなっていることも多い。筆者は、治療用義歯などを使用することによって噛むことができるようになった患者の筋肉が活性化し、顔貌や口唇の位置が変化して若返って見えるようになった症例を数多く経験している。その場合、リップサポートや切縁の位置が変化するため、再度修正する必要がある(図1)。「食べる」「話す」ということだけでなく、アンチエイジングにも歯科は効果を発揮できると筆者は感じている。4Aホール午後10/17(土)講演者論文QDT Vol.45/2020 June page 0780

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