QDT 2020年7月号
2/8

23集学的アプローチによる歯間乳頭の再建 後編:補綴的および矯正的アプローチについて成績について言及した文献は存在しないため、数少ないケースリポートおよび筆者が担当した症例を通じて術式のポイントを説明する。1)補綴歯科治療による歯間乳頭のクリーピングの促進 本手法は、歯周外科処置や誤った清掃方法、不適切な補綴装置などが原因で退縮した歯間乳頭を、補綴装置製作の過程で歯間乳頭に刺激および圧を加えクリーピングを促す方法である1、2。個人的な見解ではあるが、とくにコル状(歯間乳頭先端の鞍状のくぼみ)に崩壊した歯間乳頭は比較的再建できる可能性が高いのではないかと考えている。本手法による歯間乳頭の再建のポイントは“歯間乳頭の本来のポテンシャルを最大限に引き出すこと”である。はじめに症例を供覧し、各ポイントについて解説を進めていく。①症例3:補綴的アプローチにより歯間乳頭のクリーピングを促しブラックトライアングルを改善した症例 患者は前歯部の審美不良を主訴に来院された(図1)。₁は抜歯適応であり、咬合高径を増加させた上で全顎的な補綴歯科治療が必要であった。う蝕処置、歯周基本治療、インプラント埋入、結合組織移植術による歯槽堤増大術などの補綴前処置が終了し、プロビジョナルレストレーション(以下、PVR)を装着した状態を図2に示す。PVRのコンタクトポイントを審美的に最適な高さに設定したところ、₂₁間の歯間症例3:補綴的アプローチにより歯間乳頭のクリーピングを促しブラックトライアングルを改善した症例図1 初診時の口腔内写真。図2 補綴前処置が終了した時点の正面観。₂₁間の歯間乳頭はNordland and Tarnowの分類のClass 2である。この時点において形成は歯肉縁上に留めている。図3 ₂₁間および₃₂間の歯間乳頭はコル状に崩壊している。図4 支台歯形成後。フィニッシュライン:隣接面は歯肉縁下1〜1.5mm、頬側は歯肉縁下0.7mm、舌側は可及的に歯肉縁上に設定した。図5 ₂₁間隣接面のサブジンジバルカントゥアの調整。図6 コンベックス状のサブジンジバルカントゥア。QDT Vol.45/2020 July page 0879

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る