ザ・クインテッセンス2020年10月号
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63歯科用スキャナの原理的欠陥「エッジロス」とその解決策QDT Vol.45/2020 October page 1323のサプライヤーもこの事実を把握しているが、今のところ積極的に解決しようとする動きは見えず、放置されているのが現状のようである。 しかし、文献やセミナーではCAD/CAMの適合性については臨床的に問題がないと報告されていることが多く、筆者は疑問を抱いていた。技工作業の現場では歯科技工士がマイクロスコープ下で“あたり”を見ながら、手作業で調整して適合を得ている現実を歯科医師は把握しておらず、あまり関心を引かないのかも知れない。この問題については2017年に山本 眞氏(M.YAMAMOTO CERAMIST'S INC.)による完璧な解決法「エッジ延長法」1(図2)が示されて以来、その後それに関連した論考をあまり目にしていない。重要な問題であるにもかかわらず、CAD/CAM関係の講演やセミナー等、筆者の周辺では論考が深まった記憶はない。 山本氏は、ショルダーマージンの場合、計算上では150μm程度クラウンは浮き上がるとしている。筆者の臨床実感では50~60μmであるが、これは決して看過できるものではない。支台歯に欠陥のあるデータに対していかに精緻なデザインを行っても砂上の楼閣である。CADソフトによるデザインが主流になりつつある現在、この問題を解決せずして補綴装置を口腔内に無調整でセットするというのは奇跡でしかあり得ない。 さて、現在モデルレスによる補綴装置の製作が可能になってきたが、モデルレスでは山本氏が提示したアナログ的な解決法で対応することができない。そこでデータの処理法を考えることによって解決しようと試みたのが本稿で述べる「CADソフトによる対応」、「スキャンデータの修正」の2つの方法である。また、加えて本稿では将来の展望として「AI(人工知能)による対応」にも触れたい。 CAD/CAMの適合性やエッジロスの原因、その他の詳細は山本氏の論文で十分説明し尽くされてはいるが、本稿の内容を理解していただきやすくするためにも、まずは簡単にエッジロス現象の原因や問題点を筆者なりにまとめ、その後に先に挙げたそれぞれの解決法について解説していきたい。なお、山本氏による「CAD/CAMシステムによるマージンの適合性問題への挑戦」1にはスキャナから造形に至るまでの適合に関するほぼすべての基礎知識が記述されており、一読をお勧めする。当該論文が掲載されたQDT2017年5月号は常に筆者の座右にある。「エッジロス」に対する完璧な解決法である山本 眞氏による「エッジ延長法」1支台歯模型上のコーピングの状態コーピングのSTLデータエッジロスエッジロス支台歯のSTLデータワックス支台歯模型エッジ延長法通 法図2 山本 眞氏によるコーピングの浮き上がりの図解と「エッジ延長法」の原理。(参考文献1より引用)。 本法はエッジロスに対する完璧な解決法であるが、アナログ的な対応であるため、モデルレスでの補綴装置製作時には適応することができない。今後を考えると、データ処理によって解決する方法が求められる。

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