ザ・クインテッセンス2020年10月号
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96 現在の歯科界におけるデジタルソリューションの進化は、われわれの臨床に大きな変化をもたらしている。そしてその変化は、日々時間に追われる歯科技工士のワークスタイルを改善するための鍵になると筆者は考えている。日々の臨床の中で本当はじっくり手間をかけたいところに時間をかけられないという経験は多くの方がしていると思う。筆者がデジタル化に期待するのは、本来手間をかけるべき工程のために時間を作るためのツールとしての役割である。デジタル化はそれ自体が目的ではなく、ただのプロセスであり、それ以上でもそれ以下でもないと考えている。 では、現在の技工業界でどの程度のラボがデジタル機器をツールとして使いこなせているのだろうか。実際のところ、多くのラボでは使ってはいても、使いこなせてはいないのではないかと考えている。かくいう筆者自身もCAD/CAMを導入した当初は、導入前よりも時間に追われるような状況だった。たとえば、ミリング後に模型上で適合するように調整する工程。どこのラボでも当たり前に行われていることだが、ミリングマシンで加工されたものをさらに手作業で調整するという工程は本当に必要なのだろうか。そうした疑問から試行錯誤を繰り返していくことで、一般的に妄信されているような「CAD/CAM(デジタル)だからクオリティが安定している」というわけではなく、また逆に手作業での調整ありきの「現状のCAD/CAM(デジタル)ではこの程度が限界」というわけでもないことがわかった。検証し、使用する側が工夫することによって精度は大きく変わることを知った。つまりアプローチは異なるものの、結局は従来の技工操作と同様なのである。デジタル機器も扱う側が正しく理解することで精度を上げることができ、その結果、われわれはこれまで作り出せなかった臨床における時間的な余裕を得ることが可能になる。 本連載では、そのための考え方をできるだけ詳細に解説していきたいと考えている。本連載の内容を知らなくても、たとえばミリング後に模型に対して手作業連載のはじめに─Road to Modelless連載Road to Modellessモデルレス時代に向けてデジタル機器を使いこなすために藤松 剛株式会社 STF京都府長岡京市開田2-1-5 とみふじビル3F第1回 モデルレスの準備QDT Vol.45/2020 October page 1356

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