QDT2020年11月号
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61NATとNFRを応用したCADデザイン 前編NATとNFRの目的 われわれ歯科技工士の製作する補綴装置は、咀嚼や発音などの機能を阻害することなく生体(天然歯および下顎運動)に組み込まれなければならない。そのための理想的な考え方として、前歯部群と臼歯部群が静的および動的に調和し、垂直圧においては臼歯が前歯を、側方圧においては前歯が臼歯を保護する相互保護咬合(Mutually Protected Occlusion)がある。この考えは広く臨床に用いられているが、これを達成するためには顎関節(下顎運動)および骨格形態、そして各歯の解剖学的形態を深く分析し、理解しておく必要がある。 今回紹介するNATとNFRは、ドイツの歯科技工士であるZT Dieter Schulzが提唱したワックスアップのテクニックであり、この目的を達成するための手法のひとつである。ZT Dieter Schulzは補綴装置を製作するうえで重要な目的を、「解剖学に基づき、機能的にも自然(天然歯)と調和した補綴装置を製作することにある」としており、そのためのテクニックとしてNATとNFRを提唱している。 まず、基本となるのがNAT(Naturgemaesse Aufwachs-Technik:自然〔天然歯〕に適ったワックスアップテクニック)となる。NATは簡単に表現すれば、顎関節(下顎運動)の運動経路を歯冠形態に反映させた形態であり、ZT Dieter SchulzはこれをPrimärmorphologie(一次形態)とよんでいる。これはつまり「解剖学的形態」といえる。 そのうえでNFR(Natur und Funktionsgerechte Rekon-sutruktionen:自然〔天然歯〕に適い、機能に適応した修復)という考えも組み込む。NFRとは簡単に表現すれば、ファセット形態である。既存の歯列にあるファセットを読み取り、そこに順応させた形態である。これをZT Dieter SchulzはSekundärmorphologie(二次形態)とよんでいる。NATの解剖学的形態に対して、NFRは「患者固有の口腔内との調和を目指した形態」といえる(図1)。 以降、それぞれの考えについて解説していく。Naturgemaesse Aufwachs-Technik自然(天然歯)に適ったワックスアップテクニックNATNFRNatur und Funktionsgerechte Rekonsutruktionen自然(天然歯)に適い、機能に適応した修復Primärmorphologie(一次形態)Sekundärmorphologie(二次形態)顎関節(下顎運動)の運動経路を歯冠形態に反映させた解剖学的形態患者固有の口腔内と調和したファセット形態簡単に表現すると……簡単に表現すると……図1 ZT Dieter Schulzが提唱するNATとNFR。簡単に表現すると、NATは下顎運動を反映させた解剖学的形態、NFRはファセット形態QDT Vol.45/2020 November page 1447

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