QDT2021年1月号
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70Feature article #2 理想とされる審美性を得ようとする際、理想的なポジションにそれぞれの歯(あるいはインプラント)を配置して周囲に十分な硬・軟組織を存在させることができれば、最終的な形態の付与は概して困難ではない。しかし、現実には患者が矯正歯科治療や組織の増生手術を受け入れてくれなかったり、それらの処置がうまく奏功しなかったりすることも多い。そのような状況においても、理想的な審美性に近づけるためにはチェアサイド・ラボサイドの工夫により対応しなければならない。また、多くの症例では“最後の仕上げ”に相当する部分は補綴的なひと工夫が必要になるのではないだろうか。 本稿では必ずしも十分ではない状況で修復治療を行うにあたってどのような表現をし、理想的な形態に近づけて見せるのかという日常臨床で頻繁に遭遇する命題への対応を考察したい。しかし、それぞれの症例で条件は異なるため、アプローチの仕方に明確な法則や手順は見出しにくい。そこで、未だ試行錯誤の過程ではあるが、症例を供覧しながら筆者らなりの「その形にどう見せる?」という取り組みを記していく。なお、それぞれの症例でチェアサイドとラボサイドで特に打ち合わせや依頼した部分に関しては、双方からのPoints to request!として記したい。不十分な条件からの形態回復の工夫−審美領域の形態表現におけるチェアサイド・ラボサイドの取組み−前編:幅径・歯軸・ジンジバルラインの見せ方佐藤洋平 Yohei Sato*1/伊原啓祐 Keisuke Ihara*2/野平勇人 Hayato Nohira*2*1鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-3*2鶴見大学歯学部歯科技工研修科 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-3はじめにQDT Vol.46/2021 January page 0070

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