QDT2021年2月号
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69不十分な条件からの形態回復の工夫(後編)孤立感へのアプローチその孤立感にどう見せる? 孤立感を表現するには1歯1歯が単独で存在するように製作することが重要であり、そのためには大きく3つのポイントがある。 1つ目は連結部に対して唇側から深い切れ込みを入れることである。孤立感だけを考えれば単純に切削用のディスクを深く入れればよいが、切れ込みが深くなれば連結部の断面積は減少するので、補綴装置として要求される強度が不足することも考えられる。実際の臨床では色調や加工性などさまざまな点を考慮して材料選択を行うが、孤立感の観点からは高強度の材料が望ましい。図1に過去に連結部で破折したブリッジの破断面を示す。本症例はプレスセラミックスを使用したが、連結部断面積がメーカー推奨値を満たしていなかった。長軸方向への延長はできないので唇−口蓋側方向で厚みを確保する必要があることがわかる(図2)。このような症例では、高強度のジルコニアを選択するのが望ましいかもしれない。連結部は必ずメーカーの推奨値以上の断面積を確保することが肝要である1。しかし、高強度の材料を用いていたとしても、要求される断面積を確保しようとすると対合歯の噛み込みなどによって切れ込みを入れにくい場合もある。その際には、連結部隣接面にステインを施す(Case 4-1)。ステインで影を表現することで視覚的に立体感が増す。 2つ目はロングコンタクトを避けることが挙げられる。個々の歯を理想的な形態に回復し、その結果 ブリッジもしくは複数歯を連結した症例では、個々の歯が独立しているかのような孤立感を創出することが理想である。・コンタクトエリア頬側への深い切れ込み・それぞれの歯冠形態を接触させた際のコンタクト下に連結部が存在しない・上部・下部鼓形空隙の存在▼理想的な 孤立感 のチェックポイントと目標■ブリッジの連結部は必ずメーカー推奨値以上の断面積に設定する図1 破折したブリッジの破断面。縦6mm、頬舌径2mmで断面積は12mm2(メーカー推奨は16mm2)。孤立感を求めるあまりに深くディスクを入れすぎてしまった(プレスセラミックスで製作)。図2 縦の長さは変更できないため、頬舌径を厚くすることで対応する。メーカー推奨の断面積を確保するには頬舌径約3mmの厚みが求められる。12QDT Vol.46/2021 February page 0211

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