QDT2021年3月号
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67前歯部補綴における陶材築盛 単冠補綴で「修正や再製作にならない」ための試み 昨今、モノリシックマテリアルにステイニングを行って完成させる補綴装置が主流となってきており、陶材を築盛して製作する補綴装置は少なくなってきているように感じる。しかし、それでも前歯部、とくに単冠の補綴装置を製作する際にはステイニングだけでは再現できない症例もまだまだ存在し、陶材の築盛が必要になることも多い(図1)。 ただし、仮に陶材を築盛したとしても、前歯部単冠の補綴装置製作においては特に色のマッチングにかなりの労力を要する。患者も口腔内で隣在歯と比較することが容易なために違和感をもちやすく、修正や再製作になってしまうことも少なくない。筆者自身も過去に何度も修正や再製作になってしまった経験がある。これは陶材築盛における基本的な色調構築の考え方に問題があったからであり、現在ではその基本的な考え方を改めたことで、臨床において色調の不一致で修正や再製作になることはほとんどなくなった。天然歯と見分けがつかないようなすばらしい補綴装置を製作することが理想ではある。しかし、臨床において目指すべきなのは「いかに修正や再製作にならない補綴装置をコンスタントに製作できるか」であり、そのためには自分なりにベースとなる手法を確立する必要があると考える。そのベースを確立した先にしか理想的な補綴装置は存在しない。 とくにモノリシックマテリアルに対するステイニングからセラミックワークをスタートされた方の場合、前述のように陶材築盛が必要とされるケースが減っていることから、なかなかベースとなる自分の手法を確立するところまでは至っていないことが多いのではないかと思う。しかし、日々の臨床ではステイニングがメインだとしても、陶材築盛という選択肢があることで臨床の幅が広がることは間違いなく、少なくとも現状においては学んだほうがよいテクニックであると考える。 そこで本稿では、「修正や再製作にならない」ためにという視点から、以前行っていた築盛法と現在の築盛法を比較することで、筆者がどのような考えで色調を構成しているのかを紹介していきたい。これは筆者の臨床における陶材築盛のベースとなっているものである。また、今回は細かなキャラクターの付与などについては割愛させていただく。なお、筆者が使用している陶材はクリエイションZI-F(Creation Willi Geller,日本歯科商社)であり、特に明記していない限り、本稿では本陶材を使用している。はじめに:ステイニングが主流の今だからこそ陶材築盛で臨床の幅を広げよう図1 両側中切歯に装着されたジルコニアモノリシッククラウン。ステイニングのみの補綴装置は、特に切縁部分においての立体的な表現が難しく限界を感じる。現状、前歯部においてはやはり築盛法による製作の優位性が高い。現状、モノリシックマテリアルへのステイン法では、前歯部のすべての症例に対応するのは困難QDT Vol.46/2021 March page 0351

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