QDT2021年3月号
8/9

101第6回 CADデザインのポイント① 筆者が咬合面のデザインを行う際は、厚さマップ(図1)でクラウンの厚みをチェックしながら干渉ラインと距離マップを用いている。この際、厚さマップの数値設定は0.6mmに設定している。これは可能な限りモノリックジルコニアクラウンの厚みを0.6mmは確保したいと考えているからである。しかし、絶対に0.6mm以上にしなければならないと考えているわけではなく、たとえば形成量が少ないケースの中心窩や溝はどうしても薄くなる傾向があり、臨床的にはあまり薄くなるようなら窩や溝の位置を薄くなる場所から逃したり、形態的に可能な限り厚みを増やすといった工夫をしていく(図2)。ここには「限られた条件のなかでどうすればトラブルを回避できるのか」というこれまでの臨床で培ってきた感覚が必要になる。デジタルのもっとも大きなメリットは数値を設定して可視化できることであるが、臨床はデジタル的な0か100かでは対応できないことも多い。そのためデジタルのメリットを活用しつつ、これまでの臨床経験から得た感覚を組み合わせていくことが必要だと考えている。 対合関係・咬合接触点については、位置関係だけを確認できればよいならば干渉ラインを使用し(図3)、その接触の強弱を色で認識したければ距離マップを使用する(図4a、b)。位置関係と接触の強弱の両方を確認したい場合は両方を選択している(図5)。なお、咬合接触点に関しては、研磨仕上げなのか、グレーズ仕上げなのかで目指すゴールが変わる。さらに同じ研磨仕上げでも、シンタリング前の作業を行うのか、自分のラボでは日々どの程度研磨しているのかによっても変わってくる。筆者のラボではシンタリング前におおよその傷の除去などを行う。その上で、研磨仕上げの場合はシンタリング後はシリコーンなどでの研磨を行うのみにして、デザイン上は+0.2mmの研磨しろをとっている。グレーズ仕上げの場合は、ジャスト(±0mm)になるように設計している。 こうした操作をさまざまな症例で経験していくことが数値化と感覚の両方を掴んでいくことにつながり、それが結果とスピードを両立するためにも重要である(図6~10)。咬合面のデザインにおける数値化と感覚3Shape Dental Systemで咬合面のデザインを行う際に使用している機能①図1a、b 厚さマップはクラウンの厚みを確認する機能。設定した数値(筆者の場合は0.6mm)よりも薄くなると緑色から黄色になり、さらに薄くなると赤色になる。図2 しかし、絶対に0.6mm以上にしなければいけないと考えているわけではない。たとえば形成量が少ないケースの中心窩や溝はどうしても薄くなる傾向があり、臨床的にはあまり薄くなるようなら窩や溝の位置を薄くなる場所から逃したり、形態的に可能な限り厚みを増やすといった工夫をしていく。abQDT Vol.46/2021 March page 0385

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る