QDT2021年4月号
2/9

25デジタルデンチャー製作における3Dプリント複製義歯の応用フラビーガムを呈していた。口蓋は優型であり、上顎結節およびハミュラーノッチは比較的明瞭であった。床後方の辺縁封鎖の予後を分類するHouse’s Palatal throat fromは2級と分類された。下顎において骨体高さ(最小部)は15mm、前方部において顎堤高さはあるものの軟組織量が多かった。また、舌は大きく、後退位を呈していた(図1)。 以上の点から、術前リスク評価におけるPDI分類はⅢ~Ⅳであり、総義歯治療は比較的困難と判断した。とくに下顎の維持が十分に得られないリスクを患者に説明し、上顎総義歯、下顎2インプラントオーバーデンチャー(ロケーターアタッチメント)の治療での合意を得た。最終義歯製作までのステップを表1に示す。2)治療用義歯の製作 本症例では術前に総義歯難症例と分類されたため、治療用義歯の製作を先立って行った。治療用義歯製作時に困難だった点として、舌が大きく、歯槽頂上およびパウンドトライアングルにならった下顎臼歯部人工歯排列において舌房スペースが制限される、発音がうまく行えないという問題が生じた。そのため下顎臼歯部人工歯はニュートラルゾーンを優先し排列を行った。人工歯は調整が行いやすいよう上顎に33°の人工歯、下顎にモノプレーンの人工歯を選択した。治療用義歯の装着・調整を行い、患者から審美、機能の大部分についての了承を得た(図2)。術前に予測したとおり、下顎義歯の維持は不十分であったため、インプラント治療に移行した。3)インプラントの治療計画と埋入手術 シリコーンパテと複製フラスコを用いて治療用義歯の印象後、加熱重合レジン(人工歯部は放射線不透過性、義歯床部は放射線透過性)を用いて複製義歯(Radiographic guide)を製作した(図3)。複製義歯を装着し歯科用コーンビームCT(CBCT)を撮影後、インプラント埋入ポジションの検討を行った(図4)。インプラント治療に際し考慮する点は多岐にわたるが、本症例ではとくに以下の項目に注目した。①維持力増加を目的としてインプラントを用いること、②上顎総義歯であり下顎にかかる力が弱いと予測されること、③利用可能な補綴スペースが骨頂から約8mm(ロケーターに必要な最低補綴スペースが約9~11mm)、顎間関係Ⅱ級の総義歯(咬合接触点が小臼歯~大臼歯部)といった点から、約2mmの歯槽骨切除後治療用義歯図2 治療用義歯装着時。QDT Vol.46/2021 April page 0439

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る