QDT2021年5月号
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55フェイシャルカットバックジルコニアの臨床応用 後編現在上市されているジルコニアのおもな組成・強度・透光性の分類はじめにジルコニアディスクの選択:ケースによってジルコニアを使い分ける 前編では、フェイシャルカットバックジルコニアのメリット・デメリットについて解説させていただいた。最大のメリットであるチッピングリスクの低減も含め、フェイシャルカットバックジルコニアのメリットを理解していただけたのではないかと考えている。 また、前編でも挙げたようにフェイシャルカットバックジルコニアには、フルカバーレイヤリングと比 まず、前編でも掲載した一般的なジルコニアの分類を表1に挙げる。筆者は3Y-TZPは透光性の低さからフェイシャルカットバックジルコニアには使用しておらず、HT-3Y-TZP、4Y-TCZP単一組成積層型マルチレイヤージルコニア(以下、4Y単一組成積層型ジルコニア)、4Y-TCZPと5Y-TCZPの混合組成積層型マルチレイヤージルコニア(以下、4Y-5Y混合組成積層型ジルコニア)の3種類をおもに使用している。表2にそれぞれの強度と透光性を抜粋し、製品例を挙げる。較して透明感が表現しにくいというデメリットもあるが、これはジルコニアの選択やインフィルトレーションを工夫することで、臨床上、致命的なデメリットにはならないと考えている。 そこで後編では、筆者がフェイシャルカットバックジルコニアを製作する際に注意している点について、工程ごとにできるだけ具体的に解説していきたい。 このなかで現在筆者がおもに臨床で使用しているジルコニアディスクは、HT-3Y-TZPの「ビタYZ HT」、4Y単一組成積層型ジルコニアの「ビタYZ STディスクマルチカラー」および「TANAKAエナメルZRマルチプラス」、4Y-5Y混合組成積層型の「TANAKAエナメルZRマルチ5」である。この4種類はそれぞれ強度と組成、透光性が異なり、症例によって使い分けている。以下、この4種のジルコニアについて筆者の選択基準を述べていく。第一世代第二世代第三世代第四世代イットリアの量と結晶構造を示した表記3Y-TZP*1HT-3Y-TZP*15Y-TCZP*24Y-TCZP*2イットリア量3mol%3mol%5mol%4mol%アルミナ量0.25wt%0.05wt%0.05wt%0.05wt%結晶構造正方晶(Tetragonal)正方晶(Tetragonal)正方晶/立方晶(Tetragonal/Cubic)正方晶/立方晶(Tetragonal/Cubic)強度1,200MPa1,200MPa700MPa1,100MPa透光率35%41%49%45%主な用途PFZのフレームPFZのフレーム臼歯部モノリシッククラウン前歯部モノリシッククラウンPFZのフレームモノリシッククラウンロングスパンブリッジ特徴白く透光性の低いジルコニア高透光性ジルコニア正方晶と立方晶が混在している前歯部にも応用できる超高透光性ジルコニア第2世代と第3世代の中間の透光性と強度を兼ね備えたジルコニア東ソー製品グレードTZ-3YSB-EZpexZpexSmileZpex4*1TZP:Tetragonal Zircoonia Polycrystal*2TCZP:Tetragonal/Cubic Zircoonia Polycrystal表1 現在上市されているジルコニアのおもな組成・強度・透光性の分類。このうち、第一世代の3Y-TZPは透光性の低さからフェイシャルカットバックジルコニアには使用していない(本表は参考文献1を引用改変した参考文献2を引用)。QDT Vol.46/2021 May page 0587

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