QDT2021年8月号
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48 デジタルデンティストリーがわれわれの日常に浸透している昨今であるが、たとえば診断用ワックスアップのような手作業でも、CADソフトでのデザイン作業であっても、患者に最適な補綴装置を提供するという根本に変わりはない。 患者にとって最適な補綴装置のひとつの要素として、審美歯科治療が挙げられる。審美歯科治療を成功へ導くために必要な要件はさまざまで、これまでにも多くの文献や講演などで解説されてきた。これらのなかでよく目(耳)にする言葉として、「調和(バランス)」がある。審美歯科治療において患者は、補綴装置と何が調和することで満足度や納得感が得られるのだろうか。本稿では、どうしても感覚的になりがちなこの審美歯科治療における「調和(バランス)」について、できるだけ指標を挙げながら筆者のアプローチを述べさせていただきたいと考えている。 また、歯科技工に取り組む環境は情報交換のために使用できる資料(ツール)が増えたことで多様化しており、ラボに篭って送られてくる模型だけを頼りにしていては審美的な補綴装置を製作することはできない。われわれ歯科技工士は歯科医師の協力の下でさまざまな情報を得て、それらに知識と経験を掛け合わせて最善を尽くす必要がある。前編では、筆者が日々の臨床でどのように治療にかかわり、どんな情報を得て、何を分析し、どのようにアプローチしているのかを共有したい。なお、筆者はおもに多人種国家の米国で活動しているため、日本国内とはまた違った視点で解説できたらと考えている。文化や環境の違いから生まれる表現方法の違いもあるかもしれないが、寛容に受け取っていただければ幸いである。はじめに齋藤真行Saki Lab/18 Moore st suite #110, Belmont MA, 02478, USAFeature article #2Unbalance for Balance左右非対称な症例における「歯」と「顔貌」の調和を目指して前編:情報分析とアプローチQDT Vol.46/2021 August page 0942

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