QDT2021年8月号
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49Unbalance for Balance 左右非対称な症例における「歯」と「顔貌」の調和を目指して 前編筆者が目指すのは「歯」と「顔貌」の調和 調和という言葉を調べてみると、「何かと何かが具合よくつり合っている様1」とある。臨床に携わる読者の方々が審美歯科治療においてこの「何か」と「何か」の部分に当てはめるならば、どんな言葉を思い浮かべるだろうか? 筆者はここに「歯」と「顔貌」を当てはめたい。審美歯科治療において「歯」と「歯」、「歯」と「歯肉」の調和は当然重要であるがそれだけでは不十分であり、患者の満足度は上がらないと考えているからである(図1)。日々の臨床においては術者と患者の専門知識の差もあり、時にそれが原因で満足度を下げてしまう可能性もある。つまり筆者がこれから展開していく内容は、すべて「歯と顔貌が具合よくつり合っている状態」を創造するためのメソッドということになる。 筆者が歯科技工士として臨床を始めた20年ほど前の環境では、「歯」と「顔貌」の調和を創造するための情報は、基本的には模型上で確認可能なものに限られていたと思われる。色調の調和を図るためのシェード写真などの情報はあっても、形態の調和を図るための情報は少なかったように思うし、まれに入手できたとしても当時はその情報を活かせていなかったと思う。 この「歯」と「顔貌」の調和において、理想的かつ王道なのは「左右対称性の追求」であり、これはだれもが知るところであろう。しかし、あえて本稿では完璧な左右対称性を達成できない症例における調和にチャレンジしたい。臨床でわれわれが対峙するほとんどの症例は完璧な左右対称性を有した歯列と顔貌ではないからである(図2)。個人的な解釈ではあるが、顔貌の情報が乏しい中で製作される補綴装置ほど不自然に左右対称性という概念に縛られ、結果的に「歯」と「顔貌」の調和が得られていないように感じる。図2a、b 一見すると整っているような顔貌であっても完璧な左右対称は存在しない。図1 患者の満足度を上げるためには、図のような「歯」と「歯」、「歯」と「歯肉」の調和だけではなく、「歯」と「顔貌」の調和が必要である。臨床において完全に左右対称の顔貌の患者を担当することはほとんどない「歯」と「歯」、「歯」と「歯肉」の調和は重要であるが、それだけは不十分であるabQDT Vol.46/2021 August page 0943

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