QDT 2021年9月号
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RBFDPs カンチレバー接着ブリッジ成功のためのワンポイントアドバイスはじめに92Was ist der Zweck des Mock-ups 前回まで、歯科医師の仕事を中心にRBFDPsを解説してきた。装着時や試適に対しての注意点や作業の流れの中でのワンポイントアドバイスである。また、支台歯形成の細かなイメージを養っていただくような回もあった。RBFDPsを成功させるためには、歯科衛生士との連携、歯科技工士との細かな連絡が重要であることも説いてきた。今回は歯科技工士なしでは作業が困難になるために、歯科医師はもちろん、歯科技工士の方々にもしっかりとこの内容とその背景にある意図を理解していただきたい。 歯科技工士にとって、きれいな歯を作ることを目標とすることは間違っていない。日々、切磋琢磨し天然歯に近づく努力をしていると考える。筆者もその努力をし続けている。ここで違う視点からの考えを提示しよう。補綴装置に対して、患者の視点に立って物事を考えたことがあるかという問いを投げかけたい。 治療を始めるにあたり治療計画を立てるには、診断用模型上にてワックスアップを行うことで歯科医師と歯科技工士での共有イメージを作る。その後、模型上でシミュレーションしたワックスアップを歯科医師が患者の口腔内において再現することをモックアップしたという。多くの場合、この段階では患者の要望などの情報を取り入れて歯科技工士がワックスアップを行っていないと予測する。 このモックアップする際の注意点として、最終形態を確認することも大事であるが、歯肉のマネージメントにも効果があると考える。口腔内でモックアップを初めから製作することは困難であり、非効率である。しかも、患者へのチェアサイドでの時間的負担も大きい。今回は、歯科技工士と情報共有しながら事前のワックスアップをすることから始まり、モックアップへの流れを説明していく。難しい作業ではないこと、また、患者にとっても最終形態を具現化することへの精神的な安心感や術者にとっての道標となることを理解していただきたい。この連載は時間軸を装着時から遡って説明している。その理由は、どの工程を踏めば完成型に安全にたどり着けるかをいくつかの視点を提起し、考察していくことが意味をもつからである。モックアップに視点を置き、そこにつながる紐をたぐり寄せるイメージで一読していただけたら幸いである。1-4-1 一般的にモックアップというと、「製品の外観の検討や機能の確認のために作られる“実物大の模型”」と広辞苑1に記載されているように、クライアントに実物を見せ、ブラッシュアップしていくたたき台となるものを指していると考えられる。歯科に話を戻すと、なぜ審美領域の修復でモックアップの工程を見落としがちなのであろうか。歯科医師の視点で考えると、来院回数が増えるために患者に負担がかかる、治療費が高くなるという程度ではないであろうか。これは、事前に患者に説明を行うことで、ある程度解決ができると考える。 これを患者(クライアント)の視点から考察すると、本人の要望に沿って形になったモックアップを受け入れられるか、受け入れられないかの違いと考える。日本では事前に要望を聞いても「お任せします」という患者もいるが、歯科技工士からすると、事前情報がない状態でのワックスアップ・モックアップの依頼ほど辛いものはない。製作した後から、いろいろな要望が来ることが多い。事前に情報が入っていれば患者寄りにクオリティーを上げることが可能であろう。任せられた歯科技工士はモックアップを介在することで、補綴装置の再製率を下げることができると考える。 では、筆者が行っているモックアップの流れを説明する。まず、歯科医師から模型が届き、必要な情報(術前の模型・写真等)を参考にワックスアップを行う。患者がラボを訪問し、昔の写真を直接渡しに来る場合もある。 モックアップの製作方法は2通りある。ひとつは、モックアップをする目的とは?QDT Vol.46/2021 September page 1104

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