QDT 2022年1月号
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QDT Vol.47/2022 January page 0050歯科医師・楡井歯科医院 新潟県上越市柿崎町柿崎655650補綴設計『今ならこうする』症例2」(医歯薬出版、1987年)であり、インプラントに関しては榎本紘昭先生(新潟県開業、新潟再生歯学研究会施設長)のセミナーだった。 コーヌスクローネに代表されるテレスコープ義歯は欠損部と残存歯を一体化して補綴し、義歯の回転沈下に抵抗することを目的に使用されていたが、すれ違い咬合に対しての予後は、あまり芳しいものばかりではなかったと記憶している。インプラントにしても、欠損歯数より少ない本数で義歯を支持させるような使い方に耐えうるのか、その信頼度にも疑問が残る状況であった。そのような状況で難症例の可能性が高い、すれ違い傾向の残存歯偏在症例にテレスコープ義歯とインプラントを共存させることは選択肢になかった。本稿ではテレスコープ義歯とインプラントを組み合わせはじめに楡井喜一Kiichi Nirei第1回 すれ違い傾向の残存歯偏在症例に対する補綴設計(前編)リレー連載─変わりゆく材料・コンセプト・ニーズの中で、各時点での「最善」を考える─ 基本的な技術を習得した30歳代前半の臨床的興味は、欠損歯列への対応(テレスコープ義歯やインプラント)、そして「白い補綴」だったと記憶している(図1)。後者は歯周環境の整備・形成印象後は歯科技工士の手に委ねることとなり、その成否は歯科技工士の技術やマテリアルの進歩に依存する要素が大きく、歯科医師の手から少し離れたところにあると感じていた。一方、前者の欠損歯列への対応、とくにすれ違い傾向の残存歯偏在症例に対する補綴設計は今も模索の繰り返しで、臨床的興味の中心となっている。 当時、すれ違い咬合とテレスコープ義歯について筆者のバイブルは金子一芳先生(東京都開業、スタディグループ火曜会主宰)の「火曜会35周年記念誌1」での記述や「私の臨床ファイル2 パーシャルデンチャーの100補綴設計『今ならこうする』

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