QDT 2022年1月号
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QDT Vol.47/2022 January page 0051第1回 すれ違い傾向の残存歯偏在症例に対する補綴設計(前編)ab51「白い補綴」への興味図1a、b aの₁は20年前のサンライズクラウン(エーティーディー・ジャパン)、bの₁は最近のIPS e.max(Ivoclar Vivadent)を用いたクラウンである。「白い補綴」は歯科技工士への依存が大きい。自然感の再現は歯科技工士の高い技術に支えられている。歯頚部のシャドウの見えかたはマテリアルの違いによるところが大きい。た症例の長期経過から筆者が得た考察と、それらをふまえた最近の症例への取り組みを次回で紹介させてい【初診年月】1996年3月【治療終了年月】1997年10月【患者の概要】初診時47歳、男性友人の紹介で来院【主訴】義歯の具合が悪い。前歯の隙間が気になる【既往歴】胃がんの既往あり。現在消化薬服用中、禁煙3年目 既存義歯は不適合なクラスプデンチャーで、噛むたびに動くため食事に不自由を感じていた。 残存歯数15、咬合支持2、臼歯部咬合支持はなく左右にすれ違う形で遊離端欠損が存在し、その対顎には歯牙が存在する残存歯偏在症例であった。術前の補綴設計のイメージは上下顎ともにテレスコープ義歯、とくに上顎はタイプA義歯を想定していた。当時、テレスコープ義歯とインプラントの併用は想定していなかった。 初診時の状況を図2~4に示す。補綴設計のイメージを具現化していくために、既存義歯の改変、仮義歯製作、補綴装置製作のステップを踏んだ。上顎はすべての残存歯を支台歯として取り込み、下顎は既存義歯・仮義歯での検証から支台歯を選択した。当初抜歯も検討した₁₁は、吸収性膜を使用してGTRを試み保存した。 義歯改変と仮義歯の状況を図5に示す。また、義歯完成から3年後の状況を図6に示す。上下顎義歯の動態は術前の予想よりも安定し、遊離端部義歯床圧痕から回転沈下も比較的穏やかな状態と推察された。保存が危ぶまれた₁₁は歯根膜の拡大や、歯周ポケットの増悪は認められたが支台歯として機能しているようであった。ただし義歯の回転沈下は避けることができない欠損形態であったため、内外冠および義歯床の適合状態やただき、すれ違い傾向の残存歯偏在症例に対する補綴設計の考え方の推移を提示させていただく。❖症例の概要Case1 テレスコープ義歯で対応した症例

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