QDT 2022年3月号
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QDT Vol.47/2022 March page 0331第3回 咬合再構成治療の変革:デジタル機器を用いた客観的基準の構築43❖症例の概要(本症例は参考文献1より再録)【初診年月】2002年10月22日【治療終了年月】2007年に矯正歯科治療終了、2009年10月に治療終了【患者の概要】初診時36歳女性【主訴】前歯を相談のうえできれいにしたい【検査】前歯が欠けた後に、何度も修復処置を行うも審美的な歯とならなかったことから来院された。右側中切歯には不良修復装置が装着され、右側側切歯との間に空隙が認められる。左右の対称性も認められず、決して審美的であるとは言い難い。側方面観からの観察では、前歯の前突感が強く認められる(図1)。  咬合面観の観察では臼歯部に古い不良修復装置が認められるとともに、修復装置が脱離した部位や、₆部の大きなう蝕がうかがわれた(図2)。 また、顔貌写真からは前歯の前突感が強いことがわかる。よって、決して審美的とは言い難く、またスマイルラインとフェイシャルカスプラインとの整合性も認められない(図3)。【診断】患者の思う審美的な要件を満たすことを考えれば歯科矯正処置が必要となり、それを満たすことにより機能的にも充実すると考えられた。そこで、患者に対して説明を行い、同意の上で矯正歯科治療を行い、その後に臼歯部も含めて補綴することとなった。【治療ステップ1:矯正歯科治療開始】側貌がconvexタイプで、オーバージェットも4mmほどあることから、矯正医に詳細を分析をしていただき(図4)、上下顎第一小臼歯抜歯を行った上での矯正歯科治療が行われることとなった。また、₆部および₁にはプロビジョナルレストレーションを製作した後に矯正歯科治療を開始した。なお、患者が唇側面にブラケットを装着することを拒否されたため、舌側矯正を行うこととなった(図5)。【治療ステップ2:矯正歯科治療完了】矯正歯科治療も終盤に近づき、上顎前歯部の最終的な形態を考慮していくこととなった。そこで、診断用ワックスアップを行った(図6)。₁へのオールセラミッククラウンを計画し、それに合わせて₁近心面にワックスアップすることで、患者の本来の天然歯形態を回復することとした。その後、₁にはプロビジョナルレストレーションを装着し(図7)、₁の近心面には歯肉縁下から立ち上がるイメージでコンポジットレジン直接修復を行った(図8)。その後、₁₁間の歯間乳頭は隣接面コンタクトポイント直下まで回復したことが確認できた。また、口唇とフェイシャルカスプラインとも調和が認められることが確認でき(図9)、矯正歯科治療が終了することとなった。<患者との対話> 術者側としては矯正装置を撤去し、臼歯部の咬合安定を確立した後に、前歯部の審美修復を行っていくつもりであったが、患者の強い希望により前歯部からの修復を望まれたことから安定した咬合位置を模索し、全部Case1 今までの咬合再構成

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