QDT 2022年3月号
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59 近年、3Dスキャナー、CADソフトウェア、CAMソフトウェア、切削加工機および3Dプリンターによる3Dデジタル技術の発達が著しく、歯科領域でもそれらの新しい技術が応用され、歯科技工技術の効率化を可能とするさまざまな歯科用CAD/CAMシステムが開発されている1-17。 CAD/CAM技術を歯科領域に応用しようという試みは、1970年代から始められている1。過去の研究から、CADソフトウェアによる歯冠形態の設計は、あらかじめ作成した標準的な歯冠形状データ群をCADソフトウェアに登録しておき(以下、人工歯ライブラリ)、人工歯ライブラリから選択された歯冠形状データを患者の歯列模型上にあわせて配置・拡大・縮小・変形・移動などの変形処理を加える方法が効率的であるとされている1、2、4、6-8、12、13、19。そして、デンツプライシロナ社(アメリカ合衆国)、3Shape社(デンマーク)、exocad社(ドイツ)などの企業が開発した歯科用CADソフトウェアも、前述した歯冠形状データに変形処理を加える方法を採用している10-13。 2021年3月に、松風バイオフィックス社から、松風S-WAVE X(クロス) Designer(以下X Designer)が上市されている。X Designerは、クラウン専用CADソフトウェアとCAMソフトウェアが一体化したソフトウェアである。X Designerも他のCADソフトウェアと同様に歯冠形状データに変形処理を加える設計方法を採用しており、クラウンを効率的に設計するためのさまざまな工夫がなされている。 X Designerは、CADソフトウェアメーカーのC4W社(フランス)、CAMソフトウェアメーカーのGO2cam International社(フランス)、GO2C4W社(GO2cam International社とC4W社の合弁会社、フランス)、セイロジャパン社(日本)および松風社(日本)が共同で開発したものである。C4W社は、矯正用CADソフトウェア「ORTH’ UP」やパーシャルフレームワーク用CADソフトウェア「DIGISTELL」などの開発実績がある。また、GO2cam International社は、歯科用CAMソフトウェア「GO2dental」の開発実績がある。 X Designerの開発コンセプトは、「クラウンの設計から加工用データの作成までシームレスに連携ができて、誰でも簡単に行えること」としている。 今回、筆者はX Designerを使用して、CAD/CAM冠を製作する機会を得た。そこで、X Designerの機能、加工物の精度評価、CAD/CAMシステム構成、システムの費用および損益分岐分析について同社の松風S-WAVE CAD/CAMシステム(以下S-WAVEシステム)と比較して紹介する。CAD/CAMシステムはシステムごとにそれぞれ特徴があり、用途や活躍の場が異なるので、システムを比較することによってすみ分けが明確になれば幸いである。Comparative verification 新コンセプトの自動設計機能付きCAD/CAMシステムの実際Introduction

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