ザ・クインテッセンス6月
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87インプラント治療のトラブルとそのリカバリー~情報を共有し,安全なインプラント治療の確立を~米澤大地/野阪泰弘*兵庫県開業 米澤歯科醫院連絡先:〒662‐0013 兵庫県西宮市新甲陽町3‐12*兵庫県開業 野阪口腔外科クリニック連絡先:〒659‐0083 兵庫県芦屋市西山町11‐17 シャンブル芦屋2FThe Recovery of Troubles around Implant TreatmentDaichi Yonezawa, Yasuhiro Nosakaキーワード:GBR,抜歯即時インプラント埋入,サイナスリフト,ハイドロキシアパタイト,SAFEインプラント治療のトラブルが急増! インプラント治療は近年稀にみる画期的な治療法で,歯科業界の注目度も高い.現在,インプラントメーカーは世界に600社以上存在し,インプラントの形状も1,000種類以上あるといわれている. 昨今,経営悪化から廃院を余儀なくされる歯科医院が増加している.救世的なオプションとして,知識と技術が未熟なままインプラント治療を導入する歯科医院が増えていると聞く.歯科医療の根源ともいえる歯の保存や歯周治療をおろそかにし,安易にインプラント治療が行われるという“歯科医師のモラルの低下”も叫ばれている.ついには,インプラント治療に関連したトラブルが相次ぎ,社会問題化するに至った. インプラント治療は,病巣を取り除く一般的な外科治療とは異なり,「異物を生体に埋入する」という特徴がある.上部構造装着後も,異物が体内と体外に連結されて存在している.このような治療法は医科領域ではほとんどない.インプラントの命である骨結合の獲得と維持は生体反応を利用しているが,その詳細は未だ解明されていない.インプラントは決して恒久的な治療法ではなく,最後は何らかの形で破綻を迎えるといっても過言ではないのである. 現在もインプラント治療に関する膨大な数の論文が発表されているが,すべての論文が正しいとも限らない.注目を集めた論文が数年後には否定されることもあるが,自然科学の領域では決して珍しいことではない.インプラント治療が陥っている負のスパイラルの原因の1つに,これら新しい術式の成功例が紹介され,盲目的にそれを真似してトラブルになるという図式が考えられる.紹介される成功例も短期的な経過観察が多く,後日トラブルが生じても追加報告として公表されるのは稀であり,トラブルの原因を検証するものは少ない. そこで本稿では,筆者らが経験したインプラントのトラブル症例をいくつか供覧し,その原因について検証を行い,読者諸氏が同様のトラブルに陥らないための参考になればと考えている.特 別 寄 稿the Quintessence. Vol.31 No.6/2012̶1257

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